- はじめに:「気づき/アウェアネス」は単なる注意ではない
- 「気づき」はすべての意識を包み込む「メタな力」
- 思考や感情を「観ている」誰か
- 私たちはどれだけ「今」に気づいているか?
- ゲシュタルト療法の〈気づき〉が持つ力
◆はじめに:「気づき/アウェアネス」は単なる注意ではない
「気づく」という言葉は、日常的に使われるため、私たちはついその本質を見過ごしてしまいます。
そもそも、一般に、人は、「私は気づけている」と思っています。
しかし、「気づき」を重視する人たちは、「私たちは全然気づけていない」ということを痛感しているのです。
体験的心理療法の一つであるゲシュタルト療法や、マインドフルネス瞑想の実践では、この〈気づき(awareness)〉という能力が、驚くほど深く、人生の質を変える可能性を秘めていることが知られています。
この記事では、「真の気づきの構造的理解」を通して、〈気づき〉の力と可能性を、実感できるように解説していきます。
◆「気づき」はすべての意識を包み込む「メタな力」
真の「気づき/アウェアネス」は、思考や感情、注意といった通常の心理活動を超えた、メタ的な能力として位置づけることができます。
これが、ゲシュタルト療法が、単なる心理療法にとどまらず、東洋の禅や瞑想とも親和性を持つ理由です。
実際、マインドフルネス瞑想(ストレス低減法)の第一人者であるジョン・カバットジン博士もこう述べています:
「マインドフルネスとは、気づき(awareness)である」
つまり、「今、自分に何が起きているか?」を、思考のレベルではなく、生きた実感としてすべてを観察する力こそが、真のマインドフルネスであり、「気づき」なのです。
◆思考や感情を「観ている」誰か
この「気づき」は、西洋心理学でよく言われる「メタ認知」とも異なります。
メタ認知はあくまで思考の延長線上にありますが、気づきはそれすらも包み込み、「思考している自分」にさえ気づいている、“もう一人の自分(誰か)”のような存在です。
この視点は、インド哲学における「目撃者(witness)」という概念にも通じるものがあるのです。
◆私たちはどれだけ「今」に気づいているか?
あらためて、カバットジン博士の言葉を引用します。
瞑想をする時のように自分の心の動きに注意をしていくと、自分の心が、現在よりも過去や未来に思いを馳せている時間のほうがずっと長いことに気がつかれると思います。つまり、実際、“ 今”起きていることについては、ほんのすこししか自覚していない、ということなのです。そして、私たちは、“ 今”というこの瞬間を十分に意識していないために、多くの瞬間を失ってしまっているのです。この無自覚さがあなたの心を支配し、やることすべてに影響を与えるのです。私たちは、自分のしていることや経験していることを十分に自覚しないまま、多くの時を“自動操縦状態”で過ごしている。
『マインドフルネスストレス低減法』春木豊訳、北大路書房) ※太字強調引用者
これはまさに、私たちの多くが「今ここ」に生きていないことを示しています。
私たちは過去を悔やみ、未来を心配し、「今」の体験を流し見しているのです。
◆ゲシュタルト療法の〈気づき〉が持つ力
ゲシュタルト療法の創始者であるフリッツ・パールズは、こう語ります。
『気づく』ということは、知的で意識的なことではない。言葉や記憶による『~であった』という状態から、まさに今しつつある経験へのシフトである。『気づく』ことは意識に何かを投じてくれる。
『気づく』ことは、クライエントに自分は感じることができるのだ、動くことができるのだ、考えることができるのだということを自覚させることになる。
『気づき』は常に、現在に起こるものであり、行動への可能性をひらくものである。決まりきったことや習慣は学習された機能であり、それを変えるには常に新しい気づきが与えられることが必要である。
何かを変えるには別の方法や考え、ふるまいの可能性がなければ変えようということすら考えられない。
『気づき』がなければ新しい選択の可能性すら思い付かない。
『気づき』と『コンタクト』と『現在』は、一つのことの違った側面であり、自己を現実視するプロセスの違った側面である。(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)※太字強調引用者
つまり「気づき/アウェアネス」とは、
・自分の中に起きている体験
・外の世界との関係
・頭の中で起きている思考・空想
これらを瞬間ごとに捉える力であり、それによって人生に変化や自由をもたらす源泉の力のです。
▼グループを活かして実感を深める、プレイフルなワークショップです。
ペルーにいるMiyukiさんと行ないます。
「サイケデリック・ルネサンス」として、NHKでも特集が組まれて注目が集まるサイケデリックス。その淵源は、サイケデリック・シャーマニズムにあります。その真の実像を、ペルーのMiyukiさんとお届けします。
【ブックガイド】
変性意識状態(ASC)や意識変容、超越的全体性を含めた、より総合的な方法論については、拙著
『流れる虹のマインドフルネス―変性意識と進化するアウェアネス』
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。
ゲシュタルト療法については基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧ください。