心身一元論的・ボディワーク的アプローチ

◆ボディワーク・セラピーの地平

ゲシュタルト療法の創始者フリッツ・パールズの教育分析を行なったヴィルヘルム・ライヒ Wilhelm Reichは、初期の精神分析運動を加速した重要人物です。(パールズにライヒを薦めたのは、カレン・ホーナイだったと言われています。「あなたは複雑なタイプなので、ライヒじゃないと理解できないかもしれない」と)

ライヒは、活動の初期から物議をかもす、さまざまな先進的な知見を持っており、その後もキワモノ的な扱いや、一部ではカルト・ヒーロー的な扱いもありますが、現在においてもその考えのすべてがきちんとフォローされているわけではありません。

まず、ライヒは、精神疾患において目立ったトピックとしての「症状」ではなく、一見見過ごされがちな「性格」という恒常的な運用システムについて、早くから注目しました。そこに、病理が温存される「戦略」(性格戦略)を見抜いたのです。

近年、「人格障害」が、精神疾患をはじめ、社会のさまざまな場面で注目を集めるようになりましたが、(そういう難治の事例が増えているからですが)この「人格(性格)」というものの運用を核としたシステムへの洞察や働きかけにおいても、ライヒは先見の明を持っていました。
「性格の鎧」とは、彼が有名にした言葉です。

さらに、重要なのは、この「性格の鎧」が平行して、私たちの肉体の中に「筋肉の鎧」として存在していることに注目したことです。

生気のない目。
浅い呼吸。
悪い皮膚の色。
貧弱な手足。
こわばった身体の動作。
等々…

それらが、防衛的な生活史によってつくりあげられた(「性格の鎧」とパラレルな)「筋肉の鎧」だと気づいたのです。

そして、その肉体のブロック(鎧)、緊張や硬化に直接働きかけることが、深い情動の解放を促し、心理的な面からの解放と相乗効果を生み、より一層速く深い治癒効果となることを発見したのでした。
ここから、ボディワーク・セラピーの大きな潮流が育っていくことになったのです。

ライヒの直弟子であったアレクサンダー・ローエンの「バイオエナジェティックス」では、ライヒが発見した身体の特有のブロック箇所に、直接働きかけるワーク/エクササイズと心理的な分析とを組み合わせた体系的なシステムを洗練させました。

別のところでは、呼吸と感情との関係について触れました。人は、通常、呼吸を止めることによって、感情の流れを止めます。その結果、筋肉は段々と「硬化」し、ブロックと化します。そして、感情の流れは細くなり、流れにくくなります。生命力が枯渇し、精神に障害が現れます。

身体の特有のブロック箇所は、背骨にそって流れるエネルギーを遮断するように背骨に対して「垂直に」「切る」ようにできてきます。目、喉、胸部、骨盤等々にです。実践としては、そこに直接的に働きかけていくことになるわけです。

 

◆ゲシュタルト療法における心身一元論的開放

さて、ゲシュタルト療法の心身一元的論的なアプローチでは、身体チャンネルを通して、クライアントの意識しない多様な自我が現れてくることを見ました。

そして、ボディ・シグナルを糸口に、その多様な自我と、コンタクトすること(技法)についてを見ました。

さて、そして、ゲシュタルト療法においては、その糸口から、多様な欲求や自我状態の深く十全な表現、深い十全な感情表現というものを探っていきます。

意図せずに、身体チャンネルに現れる自我とは、葛藤や未完了のゲシュタルトとして、抑圧されてがちな欲求(自我)だからです。そのため、その自我に十分な表現と存在の場を与えてあげることが必要となります。

そして、その感情表現の際には、心身一元的な視点が特に重要になります。

というのも、ライヒらが、筋肉の鎧をもつ防衛的な身体には、十分な感情体験がないことに気づいたように、十分な感情体験とは十分な身体的運動(表現)がともなうものだからです。

そのため、クライアントの方の感情表現の際に、身体表現にも注目します。そこに十全でしなやか、自己一致した表現があるのか確認します。

また、実際、ゲシュタルト療法においては、クライアントとして、そのような、心身一元的な、全身的な表現活動を繰り返していると、表現と感情の流れによって、段々と身体の緊張や硬化が解除されてきます。

身体エネルギーが流動化し、身体が変わっていくのが実感されます。使えるエネルギーが増大して、見た目にもエネルギッシュになります。

このように、ゲシュタルト療法は、心身一元論的なアプローチであり、ワークの進展に従い、心理的にも、肉体的にも、全身のしなやかな解放が進んでいくのです。統合の進化が物理的にも分かりやすい所以です。

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧下さい。
心身統合や気づき、変性意識状態(ASC)についてのより総合的な方法論は拙著↓
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

↓動画解説 心身一元論的アプローチ