セッション(ワーク)の実際 

目次

▼セッションの構造的な普遍性 (その儀礼的構造)
▼【要約】セッションの流れ
▼前段 ワークとは

①信頼できる安全な空間(場)づくり
②あつかうテーマを決める
③リラックスして、3つの領域の情報に気づきをひろげる(マインドフルネス)。
④深い欲求(感情)に気づき、焦点化する。
⑤気づきを深め、欲求(感情)を展開する。体感を通して解決する
⑥現実に、より着地(統合)する
⑦ワークの終了

▼セッションの構造的な普遍性 (儀礼的構造)

当スペースのセッションは、ゲシュタルト療法のアプローチを土台としたものです。そして、ゲシュタルト療法のもつ即興的、遊戯的、創造的なテクニックをベースに、クライアントの方に、よりご自身の能力と可能性を拡張していただけるようにお手伝いさせていただいています。その結果として、クライアントの方に、自らの潜在力や可能性の大きさをまざまざと実感していただく形となっております。

それは、現代社会の中では、普通、想定されていないような体験的世界です。そして、その結果として、クライアントの方に、人生を切り拓いていく決定的なヒントをつかんでいっていただくこととなっているのです。

実際のセッションは、瞬間瞬間の感覚や感情、心やからだのエネルギー、意識のひろがり、とらわれや思考のパターンに、丁寧に気づいていくというプロセスとともに、じっくりと進んでいきます。

そのため、その展開は、とてもナチュラル(自然)な、人間の生理的なプロセスをたどっていくものとなります(その中で、クライアントの方は、変性意識状態(ASC)の中に、入っていきます)。

そして、そのために、セッションのプロセス(体験過程)は、不思議なことに、私たちに、子供の頃からなじみ深い、おとぎ話や昔話のパターンと、大変似かよったプロセス(ストーリー)をたどっていくことになるのです。

おとぎ話や昔話、神話とは、人間(人類)が長い歴史的な歳月をかけて、自らの心の姿を映し出したものであり、私たちの根源的な心の構造が映し出されているものだからです。

さて、セッションで起こってくるクライアントの方の内的プロセスや変容過程を見ると、そこには昔からよくあるおとぎ話の形、次のようなパターン(ストーリー)がよく見られます。つまり、

「主人公が、別世界(異界、変性意識状態)に冒険に行って、宝物(力、癒し、人生の秘密、変容)を得て、元の世界に戻って来る」

というパターンです。冒険譚(英雄の旅)のような物語形式をとっているのです。
英雄の旅

(当スペースの)ゲシュタルト療法のセッションは、そのような物語の旅と類似したパターンを持っているものなのです。そして、このセッション・プロセスとおとぎ話の類似性は、セッションとというものが人間心理の普遍的な構造に根ざした、創造と刷新(再生)のプロセスであること意味していることでもあるのです。

ゲシュタルト療法の創始者フリッツ・パールズが、自分はゲシュタルト療法の創始者ではなく、再発見者にすぎないと言った意味合いです。そのため、ゲシュタルト療法は、心理療法というだけでなく、深層心理のさまざまな領域(可能性、創造性)を探索する上でも、とても有効な方法論となっているのです。

たとえば、ユング心理学の流れをくむ、プロセスワーク(プロセス指向心理学)の創始者アーノルド・ミンデルは指摘します。

「現代のゲシュタルト療法の創始者であるフリッツ・パールズは、先住文化のシャーマンがいれば間違いなく仲間として歓迎されたであろう。パールズは、自己への気づきを促すために、夢人物(ドリーム・フィギュア)や身体経験との同一化ならびに脱同一化法を用いた。そして、モレノの「サイコドラマ」から、夢見手が自分や他者を登場人物にすることによって夢の内容を実演化する方法を借用している」(ミンデル『ドリームボディ』藤見幸雄監訳、誠信書房)


それゆえに、ご自身においても、ゲシュタルト療法のスキルを獲得されていくことは、潜在的な創造力を解放する決定的なメリットにつながっていくわけなのです。

当スペースが、ゲシュタルト的アプローチを、心理的統合(治癒)だけに限定するのではなく、創造的なアウトプットの開発や意識の拡張といった多様な側面にフォーカスしている理由でもあるのです。

以下では、そのような(当スペースの)ゲシュタルト療法のセッションが、どのような内容を持つものかを解説いたしたいと思います。

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧下さい。
おとぎ話や神話が持つ、深い意味合いは、コチラ↓
『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
変性意識や気づきについての入門は、コチラ↓
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」




体験者(お客さま)の声より

(…)ミラクルな体験でした。予測だにしなかったこと。
まさに welcome to the new world でした!

(…)ワークを体験したことで、なにかこの世界に対しての核心のようなものを得ることができたと思いました。愛の雲に明晰さという光のスペクトルが限りなく広がっていく、まるで最後には荒野からその上空の雲海に舞い上がったような体験でした。これは自分にとって世界への確信的な自覚でもありました。まさに新世界。この意識経験は、世界に対しての絶対に信頼できる体験というか、これまでのそして今後の自分の人生のクサビというか、転換点になるような体験でした。O・Hさん 男性40代


▼▼▼【要約】セッションの流れ▼▼

①信頼できる安全な空間(場)づくり
…クライアントの方が、安心して探求できる空間がつくられます。

②あつかうテーマを決める
…クライアントの方に、セッションであつかうテーマを決めていただきます。

③リラックスして、3つの領域の情報に気づきをひろげる(マインドフルネス)。
…クライアントの方に、テーマに関連した出来事を話していただき、気になる感覚・感情を、自己の心身の中に探っていただきます。

④深い欲求(感情)に気づき、焦点化する。
…気になる感覚・感情を体験していただきます。その背後にあるものを探っていただきます。このプロセスの中で、クライアントの方は、軽度な変性意識状態(ASC)に入っていきます。

⑤気づきを深め、欲求(感情)を展開する。体感を通して解決する。
…見出した感覚・感情の深い姿を体験いただきます。表現していただきます。そのエネルギーの流れが、クライアントの方を解決と解放へ、気づきへ、創造と癒しへと導いていきます。クライアントの方は、深い変性意識状態(ASC)にあります。

変性意識状態の中では、クライアントの方は、普段、同一化している自我や日常意識から離脱し、さまざまな事柄に気づくことができます。

⑥現実に、より着地(統合)する
…新たに見出したご自身のエネルギー(自我状態)を、日常生活で活かす方法を確認します。クライアントの方は、日常意識を取り戻しはじめます。変性意識と日常意識が統合されます。しかるべき「統合」の感覚を得ます。

⑦ワークの終了
…クライアントの方が、日常意識と日常感覚の中で、統合感(着地感)がしっかりと得られたと感じられた時点でワークは終了します。ワークの空間を閉じます。

動画「セッション(ワーク)の実際」


【各ステップの詳細解説】

▼前段 ワークとは
①信頼できる安全な空間(場)づくり
②あつかうテーマを決める
③リラックスして、3つの領域の情報に気づきをひろげる(マインドフルネス)。
④深い欲求(感情)に気づき、焦点化する。
⑤気づきを深め、欲求(感情)を展開する。体感を通して解決する
⑥現実に、より着地(統合)する
⑦ワークの終了


◆前段 ワークとは

ゲシュタルト療法では、セッションのことを「ワーク」と呼びます。ゲシュタルト療法同様、米国西海岸系の体験的心理療法では、クライアントとして、セッションとして或るテーマに取り組むことを、だいたい「ワーク work (作業)する」と言います。そのため、少し厳密にいうと、契約されたセッション時間の中に「ワーク」という取り組みの単位があるといえます。

「ワーク work (作業)する」とは、少し乾いた(ドライな)表現と思われるかもしれません。しかし、ここには、日本の(ウェットで)方法論に弱い、受動的な心理療法が見落としている重要な含意があるのです。ワーク(作業)という表現がどこに由来するのかは定かではありませんが、古い時代では、秘教的な思想家であるG・I・グルジェフがこの言葉を使っていました。

グルジェフの含意は、多く、自動的なロボットでしかない私たち人間を、機能調整して覚醒させていくという、まさに、乾いた(ドライな)、能動的な視点からの表現でした。フリッツ・パールズ自身も、この言葉を使っていましたが、彼の本を読むと、(冗談好きな彼らしく)少し近いニュアンスがあります。つまり、この表現の含意は、(その背後にある、絶妙なユーモアのセンスを読み取らなければならないのですが)ある面、乾いていますが、とても能動的で、肯定的なものであるといえます。

ワークに取り組む、私たち自身の主観的なイメージとしては、自分自身という素材に介入して(より気づき)、自分という生体をよりよく機能させていこうという能動的で、積極的な意欲(意志)の表現でもあるといえます。実際、そのような意欲(意志)を持つクライアントの方は、どんどんと変容されていくことになっています。

さて、ワークは、クライアントの方とファシリテーターとの相互のやりとりで、進行する取り組みの1セットとなっています。1つのワークは、大体、30分~90分かけて行ないます。

ここでは以下で、実際にゲシュタルト療法のワークでは、どのような事柄が行なわれるのかについて描いてみたいと思います。クライアントの方が、どのような内的体験をされ、どのように解放や心理的統合を得るのかについて、ワークのプロセスにそって描いてみたいと思います。

古典的なゲシュタルト療法は、グループセラピーですので、ワークを希望するクライアントの方が挙手をして、参加者皆の前で、ファシリテーターとワークを行ないます。個人セッションの場合は、クライアントの方とファシリテーターと二人で、以下のようなことを行なっていきます。

◆気づき awarenessの力の重要性

ところで、ゲシュタルト療法のセッションにおいては、クライアントの方に、ご自分の欲求や感情にたえず「気づいてawareness」もらうということを行なっていただきます。これが、セッションの核となります。

この「気づきの力」については、最近では「マインドフルネス」という言葉とともに、その本当の力が知られるようになってきました。「気づき」とは、単なる認知や認識とは違います。

「気づき」「マインドフルネス」という意図的な機能は、私たちの通常の日常意識や注意力に対して、メタ(上位)的な位置と働きを持っているものなのです。そして、正しく使うと、私たちの心理的統合と健康を大いに促進するものなのです。

逆の言い方をすると、普段の私たちは、そもそも「気づきを持たない状態」で生活しているといえるのです。そのため、諸々の問題を抱え込むことにもなっているわけです。

ゲシュタルト療法のセッションやマインドフルネス瞑想をきちん行なうと、このことに気づかれると思います。

フリッツ・パールズは語ります。

「『気づく』ことは、クライエントに自分は感じることができるのだ、動くことができるのだ、考えることができるのだということを自覚させることになる。『気づく』ということは、知的で意識的なことではない。言葉や記憶による『~であった』という状態から、まさに今しつつある経験へのシフトである。『気づく』ことは意識に何かを投じてくれる。」(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

そして、

「『気づき』は常に、現在に起こるものであり、行動への可能性をひらくものである。決まりきったことや習慣は習された機能であり、それを変えるには常に新しい気づきが与えられることが必要である。何かを変えるには別の方法や考え、ふるまいの可能性がなければ変えようということすら考えられない。『気づき』がなければ新しい選択の可能性すら思い付かない。『気づき』と『コンタクト』と『現在』は、一つのことの違った側面であり、自己を現実視するプロセスの違った側面である。」パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

セッションの中では、クライアントの方は、マインドフルネスな静かな自己集中を通して、このような〈気づき〉の状態をまざまざと体験していくこととなります。そして、自分が、人生で刻々と新しい行動をとれる存在であることを、新しいエネルギーとともにまざまざと納得していかれることになるのです。


①信頼できる安全な空間(場)づくり

さて、まず、ワークでは、それが行なわれる空間が大切となります。この場の空間づくりは、第一にはファシリテーターの仕事(役割)です。そのため、通常、ファシリテーターからクライアントの方へ守秘義務やその空間でのルール、取り決め事項などをさまざまな事柄を説明させていただきます

一方、クライアントの方には、そのセッション空間やファシリテーターの存在(質)信頼に足るものであるか否かを、ぜひご自分の感覚で確かめていただければと思います。さて、これらのことがなぜ重要なのでしょう?

ワークが効果的に行なわれるためには、クライアントの方にとって、その空間(ワークショップ、セッション・ルーム)が「安心できる、守られた空間」であることが必須となるからです。

それでなければ、クライアントの方は、安心し、リラックスして、自分自身の心の底に、降りていき、深い感覚や深い感情に、気づいたり、触れたりすることなどできないからです。ましてや、話したり表現することなどはできないからです。

また、安心できる信頼できる空間であると、クライアントの方自身に感じていただけたならば、クライアントの方の中からごく自然な形で、変性意識状態(ASC)というものも現れて来ることとなります。

そして、その状態は、自然治癒のような形で、クライアントの方の内的表現を促し、癒し(統合)を行なっていくセラピーの大きな下支えとなっていくのです。そのためにも、信頼できる空間であるか否かというのは、とても重要な要素となっているのです。クライアントの方は、この部分については、ぜひ、ご自分の直観や嗅覚を信じていただければと思います。


②あつかうテーマを決める

通常は、ワークのはじめに、クライアントの方が、そのセッションであつかってみたいテーマを提出します。テーマは、基本、何でもあつかえます。

大体は、クライアントの方が、今、気になっている生活上の課題や願望をテーマに取り上げることをおすすめしてします。

そのように、今現在、気持ち的・生理的に前景に現れてきているテーマを切り口とすると、クライアントの方にとって、潜在意識からより深いアウトプット(解決策、方向性、治癒、創造性)が得られやすくなるからです。

・今、課題や障害と感じていること。
・今、自分が強く望んでいる事柄
・今持っている心の迷い・葛藤・苦痛

・人生の中で達成したいテーマ
・最近(また昔から)、気になっていること
・人生の選択肢で答えが欲しいこと

などなどです。

いくつかテーマを用意しておいて、ワークの直前に「心の中で高まってきた事柄」があつかうのにもっとも適したテーマです。それは、心自身が発しているシグナルだからです。

ところで、セッションに来た時点でも、実のところ、クライアントの方自身が、自分の欲求が何なのか明確になっていないケースもとても多いものです。「とりあえず、何か得られそうなので来てみました」というケースです。しかし、それはそれで全然かまいません。

実際、ワークのとっかかりとしては、クライアントの方が、今現在、気になっていること(気持ち、出来事)を色々と話していかれる中で、ファシリテーターがその話を受けて、質問をしたり、焦点化することで、ワークのテーマを一緒になって見つけていく(提案させていただく)というパターンも多いのです。

ところで、ゲシュタルト療法のワークにおいては、以下に見るように、「今ここ」の感覚に、焦点化して、そこで現れてくる欲求(感情)に、丁寧に気づき、
それをたどっていくことで、必ず重要なテーマにたどり着けるという考え方があります。そこには、経験に裏付けられた、クライアントの方の心身と潜在意識への大きな信頼があるのです。そのため、はじめに設定するテーマについては、あまりギチギチに詰めて考えなくともいいといえるのです。


③リラックスして、3つの領域の情報に気づきをひろげる(マインドフルネス)。

さて、ここからが、セッションの本編に当たる部分です。おおよそのテーマや方向性が決められた後、クライアントの方のテーマが持つ内実を探索していく段階となります。

ところで、ワークの最中に、クライアントの方に行なっていただくこといえば、基本的には、心を静かにマインドフルネスの状態になり、ご自分の奥から湧いくる感覚や欲求(感情)の動きに、気づきを向け続けていただくことだけです。そして、それら気づいた事柄を話したり、表現していただくことです。

ファシリテーターはそのシェアを受けて、その体験をさらに深めていただくための、またより深い展開を行なっていただくためのさまざまな技法的な提案を行なっていきます。

そして、クライアントの方には、ファシリテーターの提案に興味が湧いた場合にのみ、また自分の心の表現として、それが「ピッタリ来た」「好奇心が湧いた」「妥当だ」と感じられた場合にのみ、それらを「実際に行なって」いただきます。「実験して」いただきます。また、ご自身で「よりもっと、やりたいこと」「ぴったりとした表現」が浮かんできた場合は、それを行なっていただきます。

つまり、さまざまな体験や表現を、
・より感じてみたり、
・より気づきの焦点を当ててみたり、
・より大きく表現してみたり、
していくわけです。

また、気づいて awarenessいくことに関していえば、心をマインドフルネスの状態にして、「3つの領域(主に、内部領域、中間領域)」湧いてくる欲求(感情)を拾いあげ(ピックアップし)ていくことが行なっていただくことです。

3つの領域とは、別に記したように。ゲシュタルト療法が考える、注意力が向けられる3つの領域のことです。

①肉体の中の感覚である内部領域
②まわりに見える、外部領域
③思考や空想の行き交う中間領域 です。
→「気づきの3つの領域」

クライアントの方には、たえず、ご自分の内部・外部・中間領域で起こるさまざまな感覚や感情のシグナルに、気づきを向けていただくわけです。

そのため、ワークの際中、ファシリテーターはしばしば問いかけます。

「今、何に気づいていますか?」
「今、何を感じていますか?」
「今、何を体験していますか?」

クライアントの方には、ワークの進行に合わせて、さまざまな表現を試していただいたりしますが、常に戻ってくるのはこの地点です。この地点が、ワークのアルファ(始点)でありオメガ(終点)であるのです。

「その感じ(感情)を、よく感じてください」
「その感覚(感情)に、よく気づいてみてください」

このようにファシリテーターは言います。その感覚・感情・欲求により焦点化していただくためです。その感覚の中にこそ、「答え」があるからです。その感覚が「答え」を知っているからです。今ここで、自分に起きている感覚や感情にただまっすぐに気づいていくだけで、治癒のプロセスは自然に進み、私たちの統合状態というものはグッと深まっていくものなのです。

自分の内的欲求(感情、快苦)に、今ここで刻々気づいていること、そこにすべての出発点(と答え)があるのです。ゲシュタルト療法が、「今ここのセラピー」といわれる所以です。

中間領域の思考や空想や連想に流されしてまうのではなく、それらに流されずに、内部領域のプロセスや外部領域の現実にただ気づいていくという支点が、統合と変容をつくっていくポイントであるのです。これが、気づき awarenessの力の重要性なのです。

…………………………

さて、ワークの具体的場面(風景)をもう少し細かく説明しますと…

ファシリテーターは要所要所で、上記のように、クライアントの方の中で起こっている欲求(感情)について問いかけと確認を行なっていきます。クライアントの方に、ご自分の感覚を澄ましていただき、3つの領域のさまざまな感覚チャネルの欲求(感情)に気づいていただきます。クライアントの方の気になっていることをシェアいただきます。例えば、以下のようにです。

▼肉体の感覚・欲求に気づく
→お腹のところに、痛みと怒りを感じます。
→肩が重くなったように感じます。
→ムカムカ気持ち悪く、吐き出したいです。

▼視覚/イメージ/ヴィジョンに気づく
→昔の学校で大勢でいる風景が見えます。
→何か黒い煙のイメージがあります。

▼聴覚/声/言葉に気づく
→こんな言葉が思い浮かびました。
→知り合いが昔こんなことを言ってました。
→耳を刺すような音が聞こえます。

▼記憶に気づく
→こんな出来事が浮かんできました。
→こんな夢を思い出しました。

クライアントの方のシェア(報告)を受けて、ファシリテーターは感覚や感情への焦点化や、その奥にあるさらなる感情(欲求)を探るためのさまざまな提案を行なっていきます。

そして、このようなやり取りで、クライアントの方は、自分の中の「気になる感覚(感情)」というものを明確にしていくこととなるのです。

そして、そのプロセスを通じて、自己の内部への潜入がどんどんと深まっていくこととなるのです。また、この過程で、だんだんと軽度な変性意識状態(ASC)に入っていくというこも起こっているのです。


④深い欲求(感情)に気づき、焦点化する

さて、ゲシュタルト心理学の世界では、生体(生物の生理)にとって、緊急かつ必要な欲求(感情)が、「図」となって感覚の前景に現れてくると考えています。
ゲシュタルトとは何か

ワークの実際の場面でいうと、気になった欲求(感情)というものは、そこに気づきを当てると、あたかも異物を吐き出すかのように、その奥底の欲求(感情)を前面に押し出してくることとなります。そして、その奥底の欲求(感情)に気づいていくと、さらにその奥底の欲求(感情)が出てくることとなるのです。そこではだんだんとエネルギーが流れてきます。そして、このような気づきと焦点化を深める中で、その欲求(感情)の深い正体が現れてくることになるのです。

そのプロセスが進む過程においては、肉体的に弛緩が起こったり、小さなアハ体験(小さなサトリ)が起こったりします。何か「わかった感じ」に触れるのです。それが、ワークを進めるサインやシグナルとなります。

さて、このようなプロセスで、ワークは進んでいきますが、クライアントの方の欲求(感情)への探索が深まっていきますと、やがて少し強めの欲求(感情)の塊たどり着くこととなります。

これが、クライアントの方が、普段の日常意識ではなかなかつかまえられない核心的なテーマ(とその入口)であるのです。

テーマは、さまざまな形で存在しています。ご自分の中の、複数の欲求(感情、自我状態)が対立しているために、心にストップや制限をかける「葛藤状態」や、過去の体験が未消化に終わっているため、心の中でストップをかけている「未完了の体験(ゲシュタルト)」「やり残した仕事 Unfinished Business」などです。

そして、心というものは、自然 nature の機能として、それらの制限や苦痛を解消しようとしてしているのです。拘束から身を振りほどくかのように、より深いレベルからの自由を得たいと望んでいるのです。奥底に救い出されるのを待っている感情(誰か)がいるのです。そのため、シグナルやサインをクライアントの方に送っているのです。

さて、ところで、ゲシュタルト療法では、心がこのような制限を超えて、自由を獲得していくプロセスを、人間の感情表現の階層性「5層1核」(行き詰まりの層 impassから内破implosionの層、爆発explosionの層への移行)として公式化しています。そこに丁寧にアプローチしていく必要があるわけです。

いずれにせよ、心の中には、そのような解放と自由を目指す指向性があるということです。そのため、プロセスを丁寧にたどっていくと、自然にそのようなテーマ(感情や欲求の塊)にたどり着くことになるのです。そして、それに触れることで、クライアントの方の欲している解決(解放、癒し、創造性)が得られていくこととなるのです。

ところで、「5層1核」とも関係しますが、「葛藤状態」や、「未完了の体験」というものは、通常、体験や抑圧の重層性にしたがって、ミルフィーユのように層状になって構成(存在)しているものなので、そのテーマにたどり着いたといっても、その入り口(表面)にたどり着いたということになります。

そこから一皮一皮剥いて、さらにその奥底にある核心に向かっていくというのが小さな旅路となります。ただ、そこにおいては、クライアントの方はすでに一種の変性意識状態(ASC)に入っているので、比較的スムーズに(ドキドキやワクワク、好奇心をもって)、そのプロセスを探索していくことができるのです。クライアントの方は、ワークが終わった後で、まるで別世界(異界)に入って行った体験だったと振り返ることが多いのです


◆ゲシュタルト療法の介入技法の意味 (心を可視化する)

ところで、ゲシュタルト療法といえば、エンプティ・チェア(空の椅子)の技法や、身体の動きや表現を使った技法など、比較的派手な?技法がイメージされがちです。

これらの技法は、そもそも何の効果を狙ったものかといいいますと、上で見たような感覚(欲求・感情)により焦点化し、明確化し、増幅(促進)するために行なうものなのです

通常、私たちの感情というものは、悶々とした混然一体化した塊の状態にあり、その感情の内訳(明細)を、私たちは明確にはとらえられてはいません。詳細を気づけていないのです。また、ワークの最中においても、さまざまな感情がもつれつつ行き交っているので、その中にどんな感情があるのか分からないのです

それらの感情を技法的な工夫によって、「心を可視化」するというが各種の技法的介入の意味なのです。クライアントの方の、欲求(感情)を焦点化したり、切り分けたり、増幅したりするためにこれらの技法を使うのです。

【例】
「その感覚(気持ち)はどんな姿(形、色、感触、冷熱、硬軟)をしていますか?」
「その感覚はなんと言っていますか?」
「その感覚は、からだのどこにありますか?」
「からだのその部分は、なんと言っていますか?」
「からだのその部分と会話できますか?」
「たとえば、この椅子に、その○○という気持ちを取り出すことができますか?」
「ここに置いたその気持ちは、どう見えますか?」
「たとえば、○○と言ってみる(表現してみる)のはどうですか?」
「実際に、そう言ってみると、どんな気持ちがしますか?」
といったような具合です。

このようにして、欲求(感情)に感覚(身体)的な実体を与えることにより、心の姿をより明確にとらえられるようになっていくのです。

また、その欲求(感情)の表現を通して、さまざまな欲求(感情)同士の対話や交流・融合を図ることもできるのです。そして、このことが心理的な解決と統合に、決定的に作用していくことにもなるのです。


⑤気づきを深め、欲求(感情)を展開する。体感を通して解決する

さて、通常、クライアントの方の中で、気づきが得られ、小さなアーハ体験が起こった後でも、その下にさらに別の欲求(感情)が残っている(待機している)ものです。

心は、ミルフィーユのように幾層にも渡って、層状に構成されているものだからです。

それら表層上のものを超えて、ある程度の解決の層(爆発の層、創造力の泉)に触れることまでを、ワークの目標とします。

ところで、人間の心は層状に積み重なって構造化されているので、或る心のテーマ(欲求・感情)が、気づきと表現を通して解放されると、その下からさらなる次のテーマ(欲求・感情)が現れてくることになります。

しかし、このプロセスの繰り返しにより、心をより深くまで、探索していけることとなり、日常生活では予想もできなかったような、より深い創造力と問題解決を得ることができるのです。

そして、この探索の深まり(次元)の深さが、通常のカウンセリングやコーチング、NLPなどと較べた場合の、ゲシュタルト療法の持つ圧倒的な効果の秘密でもあるのです。アーノルド・ミンデルが指摘するようにシャーマニズム的な深さでもあるのです。

◆変性意識状態(ASC)の体験とスキル

また、このように、ワークの中で、自己の感覚に深く没頭し、沈み込んでいく過程で、クライアントの方は、軽度な変性意識状態(ASC)に入っていくこととなります。それがゆえに、普段気づけないことに色々と気づけたり、普段行なわないような表現を、(あまりまわりを気にせずに)行なえるようになるのです。これは、変性意識状態(ASC)においては、日常意識の価値観や知覚が希薄になり、潜在意識よりエネルギーと情報が流れ出すからです。

また、変性意識状態(ASC)の体験自体が、クライアントの方の深部にある潜在意識をより活性化していくことにもなります。クライアントの方を、創造力的な解放や自由な統合状態へといざなっていくことになるのです。

また、変性意識状態(ASC)は、クライアントの方が普段同一化している自我状態や日常意識から、クライアントの方を解き放っていく作用も持ちます。たとえると、ラジオのチューニングを変えるような体験です。普段、チューニング合わせている日常意識からチューニングを変えて、別の番組(世界)が聞こえてくるのです。

これが、ワークの中で、クライアントの方が、しばしば、超越的でトランスパーソナルな(個人性を超えた)新世界を体験する理由でもあるのです。それはしばしば、光に満ちた意識拡張体験になったりもします。流れる虹のような輝くマインドフルネスを体験できるのです。

◆体感を通した表現スキルの獲得

ところで、また、ゲシュタルト療法の特徴でもありますが、クライアントの方には、実際に感じた欲求(感情)について、「心身で体感を通して」表現していただくことをよく行ないます。ここが重要なポイントとなります。

このようなアウトプット(表出・表現・外在化)の体験が、クライアントの方の心身の中で組織化され、心理的統合と表現力の決定的な力となっていくからです。

それは、頭の中(中間領域)だけではなく、実際に「物理的(内部領域・外部領域)に」表現することは、心身の神経的・脳的・エネルギー的に直接作用することになるからです。肉体動作を通して、その体感エネルギーを通して、物理的・神経的に書き換えることになるからです。

そのため、要所要所で、ファシリテーターは、クライアントの方の、物理的な表現を促していくこととなります。それはそれが、とても決定的な効力を持つためであるからなのです。

そして、クライアントの方は、ワークの中で、このような気づきと物理的表現、小さなアーハ体験を繰り返す中で、やがてひとつの感覚的な結論、腑に落ちる段階(地点)に到達することとなります。その地点で、ひと一区切りの創造的解決(解放)がもたらされるのです。そして、クライアントの方の、気づき・ある種のサトリ・充実感と統合感・着地感とをもって、ワークは終了していくのです。

クライアントの方にとって、その感覚は、自分の本当にやりたいことを、葛藤や妨げなくできるように感じられる充実感、もしくは自分の欲求がひとまとまりになったような統合感、集中された「まとまり感」、主体感として感じられるものとなるのです。


⑥現実に、より着地(統合)する

ワークの最後の段階では、クライアントの方の深い部分から出て来た、まだ柔らかい新しい欲求(感情)、統合感を、日常生活で充分に活かしていけるか確認を取っていきます。変性意識状態(ASC)の中でとらえられた、その欲求(感情)感覚が、日常的現実できちんと活かされるように調整をとっていきます。

新しい心の要素(意欲、能力、欲求)は、過去の人生の中で、理由があって抑圧されていた自我の要素となります。そのため、その新しい自我(意欲、能力、欲求)が、既存の日常生活の中でも、しっかりと自立し、新しい力を発揮できるように、居場所(結界)と防具を持つことが大切となるのです。

そのため、ワークの最後の場面では、時間をかけて、(変性意識状態から抜け出ていくとともに)新しく現れてきた自我状態(意欲、能力、欲求)と、既存の自我状態との統合を定着させていきます。

具体的な手法としては、現実の実務的な場面のリハーサルや、(グループの場合などは)巡回対話の技法など色々ありますが、ここでは省略いたします。

この場面は、ワークとしては、新しい自我状態をサポートし、たくましく育てていく方向づけとして、決定的に重要な場面(局面)でもあるのです。


⑦ワークの終了

クライアントの方が、日常意識と日常感覚の中で、統合感(着地感)をしっかりと得られたと確認された段階で、ワークは終了します。ワークの空間が閉じられていきます。


さて、以上、長くはありましたが(また単純化して書きましたが)、ワークの中核的なプロセスをざっと解説いたしました。

実際のワークは、クライアントの方のさまざまな想いや逡巡を探索しつつ、あちこちに寄せては返す波のように、行きつ戻りつしながら進んでいくものです。

しかし、漂流しつつ展開するそのプロセスの背後(核心)には、クライアントの方が元来持っている、パワフルで素晴らしい創造力の泉が必ず待っているものなのです。

そして、このようなワークの探索を通じて、クライアントの方の人生は、確実に変化・変容していくものであるのです。ぜひ、実際のワークを体験してみていただければと思います。

 

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧下さい。

気づきや統合、変性意識状態(ASC)へのより総合的な方法論は拙著↓
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

および、よりディープな
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

↓動画解説 セッションの効果