【内容の目次】
- はじめに 変性意識の事例とその活用
- 「変性意識」が広く認知された時代背景―サイケデリック・カルチャー
- 「変性意識状態(ASC)」とA.マズロー(トランスパーソナル心理学)
- 「潜在意識」「無意識」という胡散臭さ
- 変性意識状態(ASC)と心の変容(心理療法)
- 変性意識状態(ASC)とはⅠ 入り方
- 変性意識状態(ASC)とはⅡ 意識のチューニング
- 変性意識状態(ASC)の治癒効果と超越的状態
- 変性意識のもたらす変容と、人生で活かす方法
- 参考文献
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1.はじめに 変性意識の事例とその活用

人間の潜在能力の開発や、能力と天才性の素晴らしい発掘、または心の治療(心理療法)における治癒・改善(さらに超越的能力の開発)まで、人間の潜在意識/能力を理解するものとして、「変性意識状態(ASC)」という、とても有意義な定義(概念)があります。
変性意識状態(ASC)は、私たちのこの現代社会の「裏口(バックドア)」です。
ほとんどの人が知らない(それを語っている人でさえ本当には深くわかっていない)、その「裏口(バックドア)」を知ることができると、私たちの人生は一変していくことになります。
世の中で信じられていることとは、まったく違う、想像を絶する世界が開いていくことになるのです。
さて、「変性意識状態 Altered states of consciousness 」とは、1969年にカリフォルニア大学の心理学者チャールズ・タート博士の編著により有名になった「意識状態の定義」ですが、私たちのこの「合理的・論理的・理性的な日常意識」状態以外のさまざまな意識状態を指した総称のことです。
「日常意識」以外のさまざまな意識状態―瞑想状態、催眠状態、飲酒による酩酊状態、宗教儀式などのトランス(入神)状態、夢、向精神性薬物によるサイケデリック(意識拡張)状態、宗教的な神秘体験など―を指した言葉です。広くとると、臨死体験(NDE)、体外離脱体験(OBE)、また俗に世間でいう「ゾーン ZONE」と呼ばれている「フロー体験 flow experience 」なども、これに含められると考えてよいでしょう。変性意識とは、それ自体では特に良いものでも悪いものでもない、価値中立的な、日常意識以外の、変異した意識状態という意味合い(総称)です。
しかし、このように、概念的なお話をしても、少しイメージがつかめないと思うので、最初にいくつか、変性意識状態(ASC)の、実際の体験事例を挙げてみたいと思います。変性意識状態(ASC)には、非常に多種多様なタイプがありますので、ここでご紹介するものも、ほんの一例です。ただ、イメージをつかみやすいように、少し極端なタイプのものを選んでいます。しかし、変性意識状態(ASC)の皆が皆、このような極端な形を持つのではありません。睡眠中の「夢」や、お酒に酔っている状態も、変性意識状態(ASC)のひとつですので。
最初のものは、人が死にかけた時に体験する、臨死体験(NDE)の報告事例です。この若い女性は交通事故に遭ったのです。
「強いショックとともに車がトラックにぶつかったのは、ちょうどそんなときでした。車が止まったので、あたりを見廻すと、奇蹟的に自分がまだ生きていると気づきました。それから驚くべきことがおこりました。めちゃくちゃになった金属のなかに坐っていた私は、自分の身体が形を失って融けはじめるのを感じたのです。私のまわりにいる警官、破損した車体、鉄梃で私を救い出そうとしている人びと、救急車、近くの垣根に咲いている花、そしてテレビのカメラマンなど一切のものと、私は融合しはじめたのです。負傷したと感じ、傷を負ったところがみえてもいましたが、それは自分と何の関係もないと思われました。負傷した部分は、身体以外に多くのものをつつんで急速に拡がっている網状組織のほんの一部分にすぎなかったのです。太陽の光が異常に明るく黄金色に輝き、世界全体が微光を放って燦然たる美しさでした。私は自分をとり巻くドラマの中心にいて至福を感じ、豊かさに満たされ、数日間はそのような状態のまま病院で過ごしました。(中略)自分という存在が、一定の時間内に枠づけられた、限定的な肉体という概念を超えているように感じるのです。自分自身がより大きな、制約されない、創造的な、まさに神聖とも言うべき宇宙の網の目の一部分であるように思うのです」
スタニスラフ・グロフ 山折哲雄訳『魂の航海術』(平凡社) ※太字強調引用者
次の事例は、薬物を使ったサイケデリック(意識拡張)体験についての報告です。
「…私が眼にしていたもの、それはアダムが自分の創造の朝に見たもの―裸の実在が一瞬一瞬目の前に開示していく奇蹟であった。イスティヒカイト。存在そのもの―エクハルト(※ドイツの神秘家)が好んで使ったのは、この言葉ではなかったか?イズネス、存在そのもの。(中略) …私は花々を見つめ続けた。そして花々の生命を持った光の中に、呼吸と同じ性質のものが存在しているのを看たように思った―だが(中略)、その呼吸は、美からより高められた美へ、意味深さからより深い意味深さへと向かってだけ間断なく流れ続けていた。グレイス(神の恩寵)、トランスフィギュレーション(変貌、とくに事物が神々しく変貌すること)といったような言葉が、私の心に浮かんできた。(中略) 神の示現、至福の自覚―私は生まれて初めて、これらの言葉の意味するものを理解した」
ハックスレー『知覚の扉』今村光一訳、河出書房新社 ※太字強調、注釈引用者
次の事例は、ヨーガでの瞑想中に入っていった(起こった)、神秘的な体験の報告です。
このありさまをはっきり伝えるのは難しい。私は一点の意識となり、広々とした光の海の中にひたっていた。視界がますます拡がっていく一方、通常、意識の知覚対象である肉体が遠くにどんどんひきさがっていって、ついに全くそれが消え去ってしまった。私は今や意識だけの存在になった。身体の輪郭もなければ内臓もない。感官からくる感触もなくした。物的障害がまるでなくて、四方八方にどこまでも拡がる空間が同時に意識できるような光の海につかっていた。
私はもはや、私ではなくなっていた。もっと正確にいえば、私は肉体の中に閉じこめられた点のように小さな意識ではなかった。点にしかすぎない肉体を包みこむ大きな意識の輪が私であった。そして筆舌につくせない歓喜と至福の明るい海に没入していった。ゴーピ・クリシュナ『クンダリニー』中島巖訳(平河出版社) ※太字強調引用者
次の事例は、俗にZONE(ゾーン)とも呼ばれる「フロー体験 flow experience 」を、事故に遭う中で、偶然、自然発生的に体験した人の報告です。この人は、登山中に滑落して、もはや降りざるをえなくなった絶壁を降りていく中で、その「フローな」心身状態に入っていきました。いわゆる「火事場の馬鹿力」というか、潜在能力/潜在意識が急に発現した事例です。
その下降中に“何か”が起こったのだ。それからずっと、そう、今日に至るまで、そのとき一体何が起きたのか、僕は考え続けている。しかし、これほど不可解で強力なインパクトはそれまでになかったものだった。
気がつくと僕は普通では到底不可能なことを、いとも簡単にやりのけていた。ネバの絶望的に垂直な壁を降りながら、いくつもの、いや何十もの不可能事をやってのけていたのである。それもひどい怪我と、ショック状態の中での話だ。僕は恰もヒョウやヤギのように、非のうちどころない、しっかりとした足どりで下降(クライム・ダウン)していた。崩れかかった岩の急斜面に手足をかけると、その都度、岩が崩れ落ちるほどの場所だ。それはダンスだった。ワン・テンポ遅れると命取りになるダンス……花崗岩についた薄氷に指をかけて体を支える。氷は音をたてて砕けるが、そのときにはもう、僕の体は先に進んでいる、という具合だった。(中略)
次は垂直に切り立った岩壁だ。手足の手がかり(スタンス)となるところはどこにもなかった。高度差は四~五メートル。僕はけし粒ほどの花崗岩にしがみついて――ありえないことのようだが、僕は本当にそうしたのだ――下降し、氷の消えた岩棚(レッジ)に立った。これは戸棚に入って、散弾銃の弾丸を避けるようなものだ。重力に抗い、アクロバチックな動作を繰り返しながら下降したのだった。
(中略)僕は自分の限界を知っていた。この下降は、僕の技量的限界を遥かに上まわっていたのだ。心のある部分は恐怖と疲労に震え、助けを求めて叫んでいた。この荒涼とした岩場から、どこでもいいから他所へ連れて行ってくれと叫んでいたのだ。だが別の部分は反対に、自信に溢れ、気狂いじみた喜びに充たされて、動物的な生存のためのダンスを大いに楽しんでいたのである。(中略)
そのときの僕なら三〇歩離れたところから、松の葉で蚊の目を射抜くことさえ絶対できたはずであると、今も確信している。ロブ・シュルタイス『極限への旅』近藤純夫訳(日本教文社) ※太字強調引用者
さて、いかがでしょうか? みな奇妙で、不思議な意識状態、心身状態ではないでしょうか?
しかし、歴史的には、このように奇妙な変性意識状態(ASC)の体験事例は、山ほど存在しているのです。ということは、それほど不思議なことではないということなのです。
この時、一体何が起こっていたのでしょうか?
どの事例においても、「従来の『私』」という感覚が希薄化し、「別様な『私/誰か』」に変容(変性)していることがおわかりいただけるのではないかと思います。
なぜ、このようなことが可能なのでしょうか?
このようなことが起こるということは、それを可能にしている「意識の構造」がちゃんと存在しているということです。
私たちの「〈意識〉の本性」が、実は、そういう隠された本質(潜在能力/潜在意識/構造)を持っているからなのです。
変性意識状態(ASC)を通すと、この構造が理解できてきます。
このことについて、このセクションでは、見ていきたいと思います。
ただ、このような変性意識状態(ASC)を、単に、偶然の出来事として体験するだけで終わったなら、それは人生の面白エピソード(ネタ)を一つ持ったにすぎません。それ以上の進化はありません。
しかし、変性意識状態(ASC)を、ただ偶然に漫然と体験するのではなく、それを意図的・操作的に体験し、私たちの普段の日常意識との間に感覚的・知覚的な統合(つながり)を持てるようになると、私たちの感じる知覚世界や日常意識、人生というものは、想像を超えた、自由でひろがりを持ったものに変容していくのです。
その時、人生や世界がずっと深さと幅を持った、豊かでまばゆいものに変容していくのです。この人生に、ある意味、「本当の魔法」が存在することに気づくようになるのです。その能力に習熟し、活用(制御)可能なものにしていくことで人生は一変していくことになるのです。
ここでは、そのようなことにまつわる一般的情報と実践的な事柄について解説していきたいと思います。
さて、ところで、かつてアメリカの重要な哲学者ウィリアム・ジェイムズは、その著作『宗教的体験の諸相』の非常によく引用される文章の中で、以下のように書き記しました。
「…それは、私たちが合理的意識と呼んでいる意識、つまり私たちの正常な、目ざめている時の意識というものは、意識の一特殊型にすぎないのであって、この意識のまわりをぐるっととりまき、きわめて薄い膜でそれと隔てられて、それとまったく違った潜在的ないろいろな形態の意識がある、という結論である。私たちはこのような形態の意識が存在することに気づかずに生涯を送ることもあろう。しかし必要な刺激を与えると、一瞬にしてそういう形態の意識がまったく完全な姿で現れてくる。それは恐らくはどこかに、その適用と適応の場をもつ明確な型の心的状態なのである。この普通とは別の形の意識を、まったく無視するような宇宙全体の説明は、終局的なものではありえない。問題は、そのような意識形態をどうして観察するかである。―というのは、それは正常意識とは全然つながりがないからである。(中略)いずれにしても、そのような意識形態は私たちの実在観が性急に結論を出すことを禁ずるのである」
ジェイムズ『宗教的体験の諸相』桝田啓三郎訳(岩波書店) ※太字強調引用者
さまざまな心の研究とともに、彼自身の変性意識体験より導かれた結論ですが、私たちの知る世界と変性意識状態について考える際にひとつの参考となる考えです。私たちが「正常」「普通」と考えているような「この意識」状態は、唯一のものでもなければ、正統なものでもない、むしろ、任意のものでしかないということを指摘しているわけです。
もっとも、ジェイムズは、(一世紀ほど昔ですが)現代アメリカ人としてこのような書いているわけで、ここで前提されている「合理的意識」「私たちの正常な、目ざめている時の意識」とは、西洋近代主義における「意識」のことです。西洋哲学の、フッサールの「現象学」などで考えられている「意識」「自意識」です。しかし一方、東洋(非西洋)の世界には、古来より、それ以外の「多様な意識の形態」が知られており、実践的にも探求されていました。ただ、私たち日本人は、東洋人ですが、西洋近代主義の波にのまれ、教育され(信じ込まされ)、現在その中で生活していますので、ジェイムズの言葉をそのまま受け入れるようにもなっているわけです。(ちなみに余談ですが、ジェイムズは、現代日本での評価はイマイチですが、心理学者ユングなどにも感銘を与え、重要な哲学者ホワイトヘッドによって「端倪すべからざる天才」と呼ばれたような、しなやかで稀有な哲学者です)
さて、このセッションでは、この変性意識状態(ASC)がどのような特徴や構造を持つものなのか、また、どのような面で私たちの人生を変容させていくのに役立つものなのか、見ていきたいと思います。
2.「変性意識」が広く認知された時代背景―サイケデリック・カルチャー

まずはじめに、そもそも、なぜタート博士が「変性意識状態(ASC)」などという概念(意識状態)を取り上げたのか、またその考えが世間で注目され受け入れられたのかという、当時(1969年)の時代背景と歴史的な文脈を見ておきたいと思います。
日本では、このあたりの文脈的・構造的・体験的理解が薄いので、変性意識状態(ASC)が、単なる風変わりで偶発的な娯楽体験か、もしくは安易な自己啓発的・能力開発的なネタで終わってしまっていることにもなっているわけです。実は、この変性意識状態(ASC)の探求は、私たち人類の意識変容(進化)に関わる重要な要素を持っているものといえるのです。
1969年、心理学者C.タート博士による編著が生まれた背景には、当時のアメリカ、特に西海岸で隆盛していた文化的思潮・流行と関係がありました。ヒッピー・カルチャー、カウンター・カルチャー、サイケデリック・カルチャーなど呼ばれた文化的思潮・流行です。「サイケデリック」自体については、別セクションで詳しく書いているのでそちらをご参照ください。
→「サイケデリック psychedelic (意識拡張)体験とは何か 知覚の扉の彼方」
(ビートルズのジョン・レノンは、1967年のことを思い出して、当時は自分もナニがナンでも「ヘイト・アシュベリー」に行かなければならないと思っていたと回想しています。当時のビートルズは、どん欲に新しい最先端カルチャーを吸収しながら、音楽的にも最先端の音楽を創造していましたが、それが、サイケデリック・カルチャーであり、サイケデリック・ロックであったわけです。ヘイト・アシュベリーはサイケデリック・カルチャーの爆心地でした。ビートルズ・ファンの間では、ジョン・レノンが、ティモシー・リアリ―(ハーバード大学教授)の The Psychedelic Experience という本からインスピレーションを受けて、Tomorrow Never Knowsという曲を書いたのは有名な話です。また余談ですが、数年後、ジョン・レノンは、ライヒアン・セラピー系の「プライマル・セラピー(原初療法)」のセッションを体験し、作風を一変させることになりました。体験的心理療法をよく深めた人はレノンのこの感覚がよくわかると思いますが、このあたりの流れというのは、時代の思潮の流れと完全に一致しているのです)
ところで、ヒッピー・カルチャー、カウンター・カルチャー、サイケデリック・カルチャーなどの思潮をつくり出した原因はさまざまありましたが、最大の原動力は、多くの一般の人々が、実際に「(向精神性物質による)サイケデリック psychedelic 体験」を持ったということでした。当時、当初は、薬物(治療用幻覚剤のLSD)も合法でした。前述のレノンも、パーティーで飲み物に勝手に入れられて、最初のトリップ体験をしたと回想しています。そのようにして、多くの一般の人々が、変性意識状態(ASC)を実際に体験したことが、その文化的流行を後押ししたのでした。頭で考えられた思想ではなく、個々人の直接的・個人的体験(意識変容体験)によって、旧来の世界観と違う「別世界」に触れたことが原動力となったのでした。
この時代の典型的な人であった(アップル社の)スティーブ・ジョブズも、自伝の中で、自らの幻覚剤LSD体験を「人生でもっとも衝撃的な体験のひとつ」として回顧しています。それが後に彼を禅へと導くことにもなったのでした。彼の禅へのコミットメントは生涯にわたるものになりました。彼がいた頃の、アップル製品の美しいデザインは、その精神的な姿勢、禅的なミニマリスムであったわけです。
さて、つまりは、そのようなサイケデリック体験を多くの人がもったため、素直な「問い」が生まれたのでした。
「この奇妙な体験はどういうことなんだろう?」
「この体験した世界はなんなんだろう?」
そのような体験世界は、それまでの西洋近代主義の世界観や、合理主義では理解できない世界でした。
(そんな答えを求めて、ティモシー・リアリーは、チベット仏教の世界観を参照し、その体験世界を解釈し、同じく仲間のリチャード・アルパートはインドに行き、グル(導師)に出会い、ラム・ダスとして戻ってきたのでした)
そのため、「これらの意識状態」を定義して、きちんと理解したい、とらえたいという欲求が、当時あったわけでした。
タート博士の仕事と「変性意識状態(ASC)」の概念の提示は、そのような時代の要望に応えるものだったのです。そして、その結果、「変性意識状態(ASC)」という概念がひろく受け入れられることになったわけです。
そして、それはサイケデリック体験だけでなく、当時、西洋社会では目新しかった「瞑想」や「ヨガ」「シャーマニズム」等、さまざまな東洋思想や非西洋的文化を理解する概念ともなったのでした。ちなみに、ヨガなど、現在私たちが普段目にする東洋的な方法論が、ごく普通に身の回りに見られるようになったのはこの時代以降のことです。
では、ここで、「実際のサイケデリック体験/変性意識状態(ASC)がどのようなものであるのか」、ひとつ具体的な事例(極端な例ですが)を見てみたいと思います。冒頭にも一部引用しましたが、イギリスの著名な作家オルダス・ハクスリーが、「サイケデリック psychedelic 」という造語を作ったハンフリー・オズモンド博士の元で、メスカリン(幻覚剤)を服用した時の体験談です。メスカリンは、もともと、アメリカのネイティブ・アメリカンの部族が、宗教儀式に使っていたサボテン(ペヨーテ)に含まれていた成分でした。スティーブ・ジョブズのいう「衝撃的」という言葉の意味合いが伝わるかと思います。
「私が眼にしていたもの、それはアダムが自分の創造の朝に見たもの―裸の実在が一瞬一瞬目の前に開示していく奇蹟であった。イスティヒカイト。存在そのもの―エクハルト(※ドイツの神秘家)が好んで使ったのは、この言葉ではなかったか?イズネス、存在そのもの。プラトン哲学の実在―ただし、プラトンは、実在と生成を区別し、その実在を数学的抽象観念イデアと同一視するという、途方もなく大きな、奇怪な誤りを犯したように思われる。だから、可哀想な男プラトンには、花々がそれ自身の内部から放つ自らの光で輝き、その身に背負った意味深さの重みにほとんど震えるばかりになっているこの花束のような存在は、絶対に眼にすることができなかったに相違ない。また彼は、これほど強く意味深さを付与されたバラ、アイリス、カーネーションが、彼らがそこに存在するもの、彼らが彼らであるもの以上のものでも、以下のものでもないということを知ることも、絶対にできなかったに相違ない。彼らが彼らであるもの、花々の存在そのものとは―はかなさ、だがそれがまた永遠の生命であり、間断なき衰凋、だがそれは同時に純粋実在の姿であり、小さな個々の特殊の束、だがその中にこそある表現を超えた、しかし、自明のパラドックスとして全ての存在の聖なる源泉が見られる…というものであった。」
「私は花々を見つめ続けた。そして花々の生命を持った光の中に、呼吸と同じ性質のものが存在しているのを看たように思った―だが、その呼吸は、満ち干を繰返して、もとのところにもどることのある呼吸ではなかった。その呼吸は、美からより高められた美へ、意味深さからより深い意味深さへと向かってだけ間断なく流れ続けていた。グレイス(神の恩寵)、トランスフィギュレーション(変貌、とくに事物が神々しく変貌すること)といったような言葉が、私の心に浮かんできた。むろん、これらの言葉は、私が眼にする外界の事物に顕わされて顕われていたのである。バラからカーネーションへ、羽毛のような灼熱の輝きから生命をもった紫水晶の装飾模様―それがアイリスであった―へと私の眼は少しずつ渉っていった。神の示現、至福の自覚―私は生まれて初めて、これらの言葉の意味するものを理解した。…仏陀の悟りが奥庭の生垣(※禅の言葉)であることは、いうまでもないことなのであった。そして同時にまた、私が眼にしていた花々も、私―いや『私』という名のノドを締め付けるような束縛から解放されていたこの時の『私でない私』―が見つめようとするものは、どれもこれも仏陀の悟りなのであった」(前掲書) ※太字強調引用者
この体験記『知覚の扉 The Doors of Perception 』は、米ロック・バンドの The Doors の名前の由来にもなったように、当時よく読まれ(今も読まれていますが)、サイケデリック体験の指標のひとつとなりました。変性意識状態(ASC)というものの一端がうかがえるかと思います。このような深遠な世界が、いつもいつも得られるわけではありませんが、このような啓示につながる体験領域であるということです。そのため、ひとつの時代を特徴づける大きな思潮となり、世界史に「爪痕を残す」こととなったのです。そして、日本の識者の一部が指摘するように、日本には、この思潮の影響がほとんどなかったということも、今につながる、とても重要な事態なのです。
3.「 変性意識状態(ASC)」とA.マズロー(トランスパーソナル心理学)

▼トランスパーソナル心理学と変性意識状態(ASC)
また、タート博士が本を出した1969年という年は「変性意識状態(ASC)」と関連で、別のとても重要な、かつ象徴的な出来事がありました。
それは、A.マズローが「トランスパーソナル心理学会」を立ち上げたのが、1969年だということです。
A.マズローといえば「欲求の五段階説」とか「自己実現 self-actualization 」などの理論で、ビジネス界でもひろく知られている人物ですが、アメリカ心理学会会長にもなったメインストリームの心理学者です。彼は、「人間性心理学」を唱えて、旧世代の「機械仕掛け」で「欠乏動機に満ちた」人間像を超えた、創造的な人間像を模索した人物でした。彼の有名にした「自己実現」もそのような文脈から現れたものです。
そのようなマズローは晩年、研究の果てに、「自己実現」の次にある、人間の存在状態/ステージについて考えはじめていました。
それが「自己超越 transcendence 」というものでした。
そして、「自己超越」のビジョンに、マズローを導いていったのは、彼が自己実現した人々に頻繁に見出した「至高体験 peak-experience 」という(彼が定義した)独特の心理状態でした。これは、非常に充実・超越した心理(存在)状態なのですが、自己実現した人々に特に頻繁に見られ、また普通の人々においても稀に見られる「特別に肯定的な状態」として、マズローの注意を引いたのでした。身近な例でいえば、いわゆる「ZONE」のようなものを強くしたイメージをもっていただければと思います。
→「マズロー「至高体験 peak-experience」の効能と自己実現」
それは、日常性の限界を超えるような一種の超越的な心理状態、変性意識状態(ASC)といっていいようなものなのでした。そこに、マズローは、人間の心が本来持っている広大な潜在能力を直観したのでした。
その事実(事例)が彼をして、「自己実現」を超えた「自己超越 transcendence 」の探求に向かわせたのでした。
彼は、「至高体験 peak-experience 」について語ります。
「至高経験は自己合法性、自己正当性の瞬間として感じられ、それとともに固有の本質的価値を荷なうものである。つまり、至高経験はそれ自体目的であり、手段の経験よりもむしろ目的の経験と呼べるものである。それは、非常に価値の高い経験であり、啓発されることが大きいので、これを正当化しようとすることさえその品位と価値を傷つけると感じられるのである」(A.マスロー『完全なる人間』上田吉一訳、誠信書房)
「わたくしの研究してきた普通の至高経験では、すべて時間や空間について非常に著しい混乱が見られる。これらの瞬間には、人は主観的に時間や空間の外におかれているというのが正しいであろう。(中略)かれらはある点で、時間が停止していると同時に非常な早さで経過していく別の世界に住んでいるかのようである」(前掲書)
「至高経験は、この観点から見ると、絶対性が強く、それほど相対的ではない。(中略)それらは比較的達観し、人の利害を超越しているというだけではない。それらはまた、みずからは『彼岸』にあるかのように、人間臭を脱し、自己の人生を超えて永続する現実を見つめているかのように、認知し反応するのである」(前掲書) ※太字強調引用者
「主観的に時間や空間の外」「別の世界」「絶対性」「彼岸」「自己の人生を超えて永続する現実」などというワードを見ても、この状態が、私たちの通常の心理状態、日常意識を超えている状態(変性意識状態)ということが伝わるかと思います。マズローが「自己実現」を超えた「自己超越の心理学」をつくる必要性を感じた理由もよくわかるかと思われます。
その結果、1969年に、通常のパーソナル(人格、個人性)を超えた(トランスした)人間像を研究するために、「トランスパーソナル心理学会」を立ち上げたのでした。
そして、ここで、とりわけ象徴的なことは、マズローがこの学会を一緒に立ち上げたのが、精神科医のスタニスラフ・グロフ博士というLSD研究(サイケデリック・セラピー)の大家だったということです。治療用幻覚剤のLSDによるサイケデリック体験では、まさに「時間や空間の外」「彼岸」「自己の人生を超えて永続する現実」などの強度な変性意識体験が非常にしばしば見られるからです。そして、グロフ博士は、そのような事柄を一番知悉していた人物だったのです。
晩年のマズローが構想した進化した(超越した)人間像と、変性意識状態(ASC)とが、どのように深い関連にあるのかがよくわかるエピソードかと思われます。
ちなみに、スタニスラフ・グロフ博士は、元々チェコで、合法だったサイケデリック(LSD)・セラピーを行なっていた超重要人物です。日本のユング心理学者河合隼雄は、彼と会ってすぐ「この人は本物だ」とわかったと、その出会いを回想しています。下のグロフ博士のインタビュー動画は、サイケデリック(LSD)の登場、効果、普及の理由などを、彼自身の個人的体験として、歴史的に回顧する大変興味深いものとなっています。20世紀最大の出来事を、「アルバート・ホフマン博士によるLSDの発見と、そのことが、人類の意識や霊性にスポットを当てたことだ」とする博士の話は、興味が尽きないものとなっています。↓
https://www.ntticc.or.jp/ja/hive/interview-series/icc-stanislav-grof/
※インタビュー中の、「イサレム」はエサレン、「バルド界」と訳されているものは、「チベットの死者の書」でいう「バルドゥ(中有)」のことです。
4.「潜在意識」「無意識」という胡散臭さ
さて、ここまで、人によっては聞きなれない、不思議に感じられるような、やや超越的な事例を見てきましたが、変性意識状態(ASC)は、幅の広い定義ですので、もっと私たちの生活に身近な形でもさまざまに存在しています。お酒に酔っ払うことでさえ、軽度な変性意識状態(ASC)です。ここからは、それらの少し身近で、実践的な事柄に移りたいと思います。
ところで、変性意識状態(ASC)というものは、私たちが「潜在意識」「無意識」と呼んでいるものを実際に探求していくに際して、とても有効な働きを持ちます。
さて、ところでどうでしょうか? 世間では、私たち(人間)にとって、「潜在意識がとても重要だ」などという言い方をよく聞きます。
たしかに、私たちは自分が意識していない事柄に、無自覚に影響されているような気がするので、そんな気もします。
しかし、「なんとなくそういう気もするけど…」と、イメージではそう感じるものの、そういうものの言い方に、どこか胡散臭さ、いかがわしさを感じないでしょうか?
冷静に考えると、確かに「論理的にはそういうこともあるかもしれない」けど、でも、「潜在意識がどう働いているか」など、本当にわかっている人もいない(誰もわからないじゃないか)、という気もするからです。
また、訳知り顔でそういうことを言う人に対して、確証のとれない怪しい事柄について、自分でさえよくわかっていない事柄を、訳知り顔で、勝手に語っているようにも感じられるからです。
さて、それは、実際のところ、とても正常な、正しい反応だといえます。
というのも、そう語る人達自身が、実際にはその意味が本当には感覚的にはわかっていない場合がほとんどですし、一般に「潜在意識」と呼ばれているものは、実際にはよくつかめない、中身がよくわからない事柄でもあるからなのです。
そして実際のところ、潜在意識(無意識)の重要性について、「知的に」「理論的な」話をいくら頭でわかっていても、なんの意味も無い(実効性がない)ことでもあるからなのです。
というのも、「潜在意識」や「無意識」と呼ばれているものは、それを実際に「自分の感覚として」体験したり、あつかったりできてはじめて、意味ある概念になってくるものだからです。
それを体感したり、その中身を多少「感覚的にわかる」ことによって、多少「あつかえる」ことによって、はじめて意味が出てくるものであるからです。そして、そのようなことができる人は、世間にはほとんどいないからです。
さて、変性意識状態(ASC)というものは、このような「潜在意識(無意識)」という「暗黒大陸」に対して、アプローチできるという意味で、とても価値があるものなのです。
他の手段で、私たちはこれについて理解を深めることはできないからです。
まずは、変性意識状態(ASC)は、「潜在意識(無意識)」とこの日常意識をつなぐ領域(媒介領域/状態/感覚)として、私たちにとってとても重要性がある(価値がある)ものであるといえるのです。
下の図に示しましたが、これはいわゆる「氷山モデル」です。精神分析のフロイトが唱える図式によると、心とは大部分が「潜在意識/無意識」であり、私たちのこの「顕在意識/日常意識」とは、(海面で出た)氷山の一角みたいなものであるという図式です。そして、私たちは、中身のよくわからない「潜在意識/無意識」の衝動に突き動かされながら、無知のままに苦しみながら生きているという人間モデルです。だから、普通の人々は、自分自身の感情的な悩みを簡単には解決できないし、動機も上げられないし、同じ失敗を繰り返しても、自分を変えることなど大してできないということです。古典的なフロイト的深層心理学は、基本的にこのような見方で人間を見ているわけです。
変性意識状態は(非常に多様な形態がありますが)、まずは、この「潜在意識/無意識」と「顕在意識/日常意識」の中間にある状態が、一番、私たちにわかりやすい状態の変性意識状態です。
つまり、変性意識状態の価値(重要性)のひとつは、普段は分裂している、広大な「潜在意識」との「日常意識」面での意識的なつながりをもたらし、「潜在意識」への実感的・実践的な理解をもたらすという点なのです。
そのため、その変性意識状態に習熟することにより、潜在意識と深く交わり、そこから能力を引き出したり、操作する方法を得ていくことが可能になるということなのです。これが、変性意識状態(ASC)が、私たちにとって、とてつもなく重要な価値(人生のマスター・キー)を持つ面といえるのです。

5.変性意識状態(ASC)と心の変容(心理療法)
では、その関連で、次に、身近で「実利」を得られるところにある、心の変容(心理療法)における変性意識状態(ASC)の効果や有効性について見ていきたいと思います。
ところで、「心理療法」とは、クライアント(来談者)の方の持っている心の悩みや苦しみを「取り除き」「癒す」ことを目的とした活動です。クライアントの方の「不調和/バグを起している心理プログラム」を修正(プログラミング修正/再プログラミング)することを目的としたものです。
日本では、「心理療法」などというと、いかにも「病気を治す」みたいなイメージがするので、病気でない人は関係ない、という感じがするかもしれませんが、「心理療法」の視点(視線)からすると、病気でない人(現代人)などは一人もいないのです。
「からだの治療師」から見ると、「からだが歪んでいない人」など一人もいないのと同様に、「心の歪みを持ってない人」など一人もいないからです。
本人にあまり苦痛や自覚症状がないので、特に治そうとしていないだけで、皆、心の改善や変容を行なっていくことが、本来は望ましいのです。そのことで、ずっと生きやすくなり、パフォーマンスや創造力も段階に上がるからです。それは、「からだの治療」の場合とまったく同じです。
アメリカなどでは、そのような心理療法の普及と利用があるので、日本とは違い、心理療法も積極的な能力開発技法として認められています。
さて、それはさておき、そのような心理療法において、クライアントの方の「不調和/バグを起している心理プログラム」を修正(プログラミング修正/再プログラミング)するに際して、強弱の差はあれ、この「潜在意識(無意識)」にアクセスすることがとても重要なこととなってくるのです。
というのも、私たちのこの「日常意識(自意識/「私」という感覚)」自体が、病んだ深層プログラム(問題プログラム)によって作られ、そこから映し出されている感覚(結果)なのであり、その「日常意識(自意識)」(結果)からでは、当然ながら、自分自身を作り出している「原因(基盤プログラム)」を書き換えることなどはできないからです。
自分自身がその上に乗っている台座を、自分で持ち上げようとしているようなものです。
もっと極端な喩えを使うと、プロジェクター(機器)で、壁に映し出された「映像の人物」が、プロジェクター(機器)を操作しようしているようなものです。
「映されたもの(結果)」からでは、「本体(原因)」に影響できないというわけです。
(ちなみに、世の中の大部分の心理療法が効かないのは、このようなことをやっているからです)
別のイメージで言うと、「潜在意識/無意識」は海のようなものです。
私たちの「日常意識/顕在意識/自意識」とは浮き輪をつけて泳いでいる状態です。浮き輪をつけたままだと、海の中には、潜っていけません。これが、私たちの心の姿なのです。
実は、ここに、私たち人類(現代人)の、この「私=主体」にまつわる「逆説的な事態」、もしくは「進化の失敗」があるのです。
例えば、私たちは、感情的な問題(心のモヤモヤ、苦痛)について、頭(思考)でアレコレ考えていても、一時的に気を紛らわすことはできても、決して解決しないことになっているのです。
私たちの「私」は、「本当の主体」「真の主体」ではないからです。
→「苦痛な気分」―その構造と解決法
→【図解】心の構造モデルと心理変容のポイント―見取り図 ⑤ケン・ウィルバーの「意識のスペクトル」論
つまり、必要なことは、この日常意識(自意識=私)ではない、別の経路から(迂回路を通って)、自分を作り出している問題システム(基盤の潜在意識)に介入して、プログラム修正することなのです。
といっても、そのことを考えている主体(私)が、この「日常意識/顕在意識/自意識」であるというので、その「逆説的な事態」がよくお分かりいただけるかと思います。
そして、このような「逆説的な事態」にアプローチするに際して、この変性意識状態(ASC)という状態がとても有効に作用するというわけなのです。
この心の構造は、催眠療法などをイメージすると分かりやすいかと思われます。催眠療法の基本的な考え方というものは、クライアントの方の日常意識に働きかけるのではなく、その日常意識を回避(迂回)して、直接、潜在意識(無意識)に働きかけることで、クライアントの方の心理プログラムを修正しようとする方法論です。
しかし、それは、言うは易きで、それほど簡単なことではないのです。催眠療法がそんなに効果を上げる療法でもないことを見ても、その困難な実態がよくわかるかと思います。
しかし、そのような時に、この「変性意識状態(ASC)」のスキルというものが、とても有効な働き方をすることになっているのです。
また、別の心理療法的な見方からすると、多くの場合、心の問題で悩まれている方というのは、自分の「日常意識/自意識」を過度に強化して、それに囚われているという傾向があります(自意識過剰)。というのも、感情的な苦しみは、「潜在意識/無意識」からやってくるので、それを過度に抑圧することで、反対の「日常意識/顕在意識/自意識」も強化されてしまうのです。沸騰しているガタガタいっているやかんのフタを無理やり抑えつけるような感じです。
「潜在意識/無意識」は怖ろしい悪者で、「日常意識/顕在意識/自意識」は善玉という風に、過度に分裂してしまいがちなのです。
この分裂が、かえって「潜在意識/無意識」にアクセスすることを妨害/邪魔するという逆説的な事態にもなってしまっているのです。また、そういう人たちに、自分の「潜在意識/無意識」が怖いものであるかのように感じさせる幻となっているのです。
ところが、人は、変性意識状態(ASC)に入っていくと、日常意識(自意識)がだんだんと稀薄になり、苦痛も少し薄まっていくので、「潜在意識/無意識」に楽にアクセスがしやすくなるのです。苦痛が減じて、自分の強い自意識や感情があつかいやすいものに変化するのです。そのため、より楽な気持ちで、自分の深い領域に触れることができるようにもなるのです。普通の意味では、心理療法のセッションにおいて、ここが、変性意識状態が一番効果を発揮する面ともいえるかもしれません。その働きの結果として、よりスムーズに心の深層に触れて、深い感情の解放と、心理的な治癒を進めていくことができるようになるからです。
また、変性意識状態(ASC)の中には、前述の「至高体験 peak-experience 」のように、非常に肯定的で超越的な要素(成分)が必ずいくらかは含まれています。〈意識〉自体がその本性を持っているからです。その時々の状態や、本人の習熟度により、この要素(成分)の発揮され具合が変化します。変性意識状態(ASC)に習熟すればするほど、その肯定的でトランスパーソナルな力を引き出せるようになるのです。
それをうまく利用できると(作用すると)、心理的治癒の効果は、段違いなものになっていくのです。
かつてマズローは指摘していました。
「至高経験は、厳密な意味で、症状をとり除くという治療効果を持つことができ、また事実もっている。わたくしは少なくとも、神秘的経験あるいは大洋的経験をもつ二つの報告――一つは心理学者から、いま一つは人類学者から――手にしているが、それらは非常に深いもので、ある種の神経症的徴候をその後永久にとり除くほどである。このような転換経験は、もちろん人間の歴史においては数多く記録されているが、わたくしの知るかぎりでは決して心理学者あるいは精神医学者の注目の的となってはいないのである」(A.マスロー『完全なる人間』上田吉一訳、誠信書房) ※太字強調引用者
これはすでに半世紀以上前の指摘ですが、現代でも、通常の精神医療/心理療法の世界では、まったく理解されていない点となっているのです。
さて、ところで、そのような変性意識状態(ASC)ですが、実際のところ、この変性意識状態そのものには、私たちは比較的簡単に入れるものなのです。しかしながら、その変性意識状態の中で、自分たちの望むような形で、心のプログラムを改修(変更)することはなかなか簡単には行なえないのが実情です。それに催眠療法についても触れたことです。
というのも、人間の心理運営上の安全(セキュリティ)の問題(危険)がありますので、セキュリティ・システムがきっちり設けられているからです。私たちは自分の心でさえ、簡単(自分勝手)にはプログラム修正ができないというわけなのです。だから、安易な自己啓発の方法論では、私たちはさして能力開発できないことにもなっているのです。
そのため、適切なプログラム修正を行なうには、セキュリティ・システムを抜けていく方法や、自分の心と対話する方法、心理システムに対する深い感覚的理解なども必要となってくるのです。
心理療法のセッションの中で、変性意識状態(ASC)に移行していく深化/進化型のゲシュタルト療法(体験的心理療法)などは、そのような方法や理解を深く的確なものにしてくれることになるのです。
→「苦痛な気分」―その構造と解決法
6.変性意識状態(ASC)とはⅠ 入り方

さて、ところで、変性意識状態(ASC)といっても実にさまざまなタイプがあります。「日常意識」状態からの距離の大小によって、軽いものから極端なものまで多様な形態やスペクトル(帯域)をもっています。
非常に身近なものもあれば、非日常的で神秘体験のようにそれだけで人生を一変させてしまうものもあります。
実際、私たちは、普段の生活の中でも、ふと弛んだ時に軽度な変性意識状態に入っています。ちょっとボーとしている時、何かに没頭している時、何かに集中している時。さまざまな機会に、私たちはスルリと変性意識の状態に移行してしまっているのです。
また、人間関係(関係性 relationship)の中では、人は容易に無意識の力に引き(惹き)こまれて、軽度な変性意識状態に移行してしまいます。恋愛や性愛関係、家族関係、組織内における関係性など、集合的(集団的)な情動が活性化しやすい場面では、人は憑依されるように容易に変性意識状態に巻き込まれていきます。過度に閉ざされた人間関係の中で犯罪(虐待等)が起こりやすいのはそのためです。殺人事件の多くが、親族関係の事件であるのはそのためです。感情(欲求)の活性化により、私たちは容易に日常意識状態を乗り越えてしまうのです。
イメージで喩えると、〈自意識〉自体のフレーム(枠組み)は、カメラのレンズやフレームのように無色透明なものなので、気づかぬうちに、なめらかに、日常意識状態から変性意識状態に移行するものなのです。
そのため、自分が変性意識状態に入っていても、(無自覚に没入していて)それと気づかない場合の方が多いものです。主観的には、ハッとして気づき awareness を得るまで、私たちはほとんどその違い(差異)に気づけないのです。
しかし、そのように変性意識状態に移行する中で、無意識のうちに、私たちはより冴えた直観と鋭敏性を働かせて、優れた創造力を発揮することなども行なっているのです。また悪い場合には、犯罪などをおかしてしまったりもしているのです。
そのため、重要なことは、単なる偶然として、変性意識状態に入ってしまうのではなく、操作的な感覚や気づき awareness をもって、意図的に「或る程度の強い変性意識状態」に入って、その中で、さまざまな事柄ができるようになることなのです。
強さ(強度)と気づき awareness のコンビネーションが、ポイントとなってくるというわけです。
ところで、変性意識状態とは、それ単体ではなんら特別なものではないという言い方もできます。
というのも、重要なことは、変性意識状態での体験は、私たちの日常意識状態との心理的統合や連携(対比/関連)の中で、はじめてその特異な意味が深く把握され、感覚的に操作可能なものになっていくからです。
たとえば、ドラッグ(薬物)をやって偶然的に深い変性意識状態に入っても、その体験自体(単体)が、恒常的な意識拡張や創造力拡大に結びつくわけではないということです。
(体験するだけなら、世界に体験した人は山ほどいますが、その人たちが、特に創造的な事柄を行なえるわけでもないのです)
日常意識状態との連携の中で、操作的な感覚や気づき awareness をもって、それらが統合されることで、はじめて効果的な意味をなしてくるということなのです。
さて、ところで、「意図的に」変性意識状態(ASC)に入る方法としては、歴史的・伝統的には、各種宗教のシャーマニズムの技法や儀式的なトランス状態、瞑想技法、向精神薬物の使用などが知られていました。
また、現代の体験的心理療法においては、心理セッションの深いリラックス状態や没入状態、内的な感覚(感情)集中状態を通して、ごく自然な形で、変性意識状態に入っていくことができます。その変性意識状態の中で、日常意識(自意識)ではコンタクト(接触)できなかった深層情報にアクセスして、そのプログラムを書き換えていくということも可能になってくるのです。
それというのも、変性意識状態(ASC)の中においては、日常意識(自意識)状態の時とは違った形で、潜在意識にある隠された情動や感覚情報が前景に溢れ出てきて、通常ない形でまじかに視ることも可能になってくるからです。見えなかったものが、視えてくるからです。そのような多層的な情報の中で、より微細な層の情報(感情・感覚)に気づくこと awareness ができるようになるからです。このような微細で多重的な意識状態の中で、(普段のセキュリティ・システムを超えて)深い心理プログラムにコンタクトすることや変容させることも可能となってくるわけなのです。
いずれにせよ、意図的に変性意識状態(ASC)に入るとともに、その価値を実感するためには、変性意識状態の入る数多くの反復練習や、変性意識状態の中における気づくこと awareness のトレーニングが重要となります。
それらは、現代人は、普通に現代社会でただ生きている中では、そのような感覚を体験することはないからです。そのため、私たちは、変性意識状態を充分に扱えるほどの、心の能力(スキル)が足りていないからです。
その能力を伸長させることが、まずもって必要な事柄となるのです。
そして、そのために一番重要なことは、「心理面・感情面」での解放、流動化を実現するということなのです。
通常の私たちは、皆、過去の体験(生育歴/履歴)により、「心理面・感情面」がプログラムされてしまっています。
そのため、「心理面・感情面」が硬化し、固定化されて、心を自由に動かせなくなっているのです。
ここを解放し、流動化していくことは、変性意識状態(ASC)を自在にあつかえるようになるために、必須であり、かつ一番手っ取り早い方法でもあるのです。
逆にいうと、「心理面・感情面」が解放(統合)されていないと、強度な変性意識状態(ASC)によって、かえって、心理的に混乱してしまうというケースもあるのです。
それが、ケン・ウィルバーが指摘した、「プレ・パーソナル(前個的)」という問題です。
また別の見方でいうと、深化/進化型のゲシュタルト療法等の体験的心理療法のスキルに習熟することは、これらの能力、つまり変性意識状態(ASC)に入ることと、それを感覚的に操作できる能力の開発にもつながっていくというわけなのです。そして、この点こそが、現代的心理療法と伝統的なシャーマニズムとの、原理的な類似性ともなっている点であり、当スペースの方法論ともなっている点であるのです。
7.変性意識状態(ASC)とはⅡ 意識のチューニング

また、変性意識状態(ASC)の中には、さきのジェイムズの文章にもあるような、私たちの日常意識状態から大きく逸脱した未知の不思議な意識状態の帯域もあります。
これは、ラジオのチューニング(同調)の喩えを使うと、イメージしやすいかもしれません。
通常、私たちの日常意識状態というものは、喩えると、いつも或る放送局(例えばNHK放送)にチューニングが合っており、その番組放送をいつも聞いている状態です。
その放送しか聞いたことがなく、それしか知らないので、それだけがラジオの世界であり、その番組が唯一知るもの(現実)となっているのです。
この喩えでは、NHK放送が「日常意識」状態であり、その放送番組が「現実(世界)」です。
それ以外の現実は、存在しないということです。
しかし、そもそものところ、なぜ、私たちが「日常意識」状態にロックオンされているかと言えば、それが、生物的な機能によるものだからです。意識が始終フラフラしていては、生きるのに都合が悪いからです。
しかし、過度にガチガチに固定的で、アソビがないと、それはそれで、生きるのに都合が悪いので、前記したように、私たちは軽度な変性意識状態には入りやすくもなっているのです。
しかし、それでも、いつもの知っている放送番組を聞いているという状態です。
さて、そんな日常意識状態が、何かの拍子に、もしくは意図的に、ラジオのツマミが普段よりも大きく動かされて、別の放送局(変性意識状態)にチューニングが合うことになると、別の放送番組(別の現実/世界/異界/超越的次元)が聞こえてきたりするというわけです。
変性意識状態において、私たちの意識がチューニングを合わせていくのは、普段同一化(同調)している日常的自我状態以外の、さまざまな自我状態や感覚情報の「帯域」です。
その中には、さまざまな「帯域」があります。
それらにチューニングを合わせる(同調する)ことよって、私たちは、「ゾーン ZONE」と呼ばれているフロー体験 flow experience や、マズローのいう「至高体験 peak-experience 」などという特異な状態も、実現させていくことができるのです。
そして、このような同調(同一化)を可能にしていくのが、喩えると、ラジオのチューニングを意図的に動かして、放送局を変えたりする、「意識」状態を自在に操作できる能力(スキル)ということになるのです。
このことが、心理的統合の内に十全な形でできるようになると、私たちは変性意識状態において、潜在能力を充分に取り出し、発揮できるようになるということなのです。
そして、このためには、さきほど触れたように、反復練習や訓練を行なうことが必要になってくるというわけなのです。
また、その際に、同時に、「心の流動化/統合」を充分に達成していることが必要なのですが、これは別の大きなテーマとなっているので、下記を参照いただければと思います。
→変性意識状態(ASC)とは何か advanced 編「統合すれば超越する」 6.なぜ、幼稚なものが多いのか 超個(トランスパーソナル)と前個(プレパーソナル)の違い
そして、このような注意事項も含め、方法論的内容を精査してみると、これらは世界史的な展望で俯瞰してみた場合、やはり、伝統的なシャーマニズムの中で実践された事柄と大変近似したものとなっているのです。
ところで、有名な人類学者カルロス・カスタネダのシャーマニズム的な著作(ドン・ファン・シリーズ)の中には「集合点」と呼ばれる、知覚情報を編成するポイント(結節点)が言及されています。集合点が動くと、私たちは、「日常的な自分自身」であることを失い、その現実も溶解して、まったく未知の不思議な世界に変化していくのです。カスタネダのいう集合点が、厳密に何を意味しているのかは分かりませんが、比喩的にも実践的にも、そのイメージは大変納得性の高いものです。それはやはり、ラジオのチューニングが、変わっていくような事態なのです。
実際、たとえば、宗教的な修行や体験的心理療法を、過度に強力に推し進めると、やはりまれに、そのように「集合点」 が動いたかのような強烈な変性意識状態、別種のリアリティ体験をすることがあります。
それは、私たちを、未知の体験領域-空間に投げ込むことになります(場合により、心身に混乱をきたすケースもあります)。
アメリカにおいては体験的心理療法や向精神性物質によるサイケデリック(意識拡張)研究も盛んなため、(前段で触れた)マズローと一緒にトランスパーソナル心理学会を立ち上げた精神科医スタニスラフ・グロフ博士などは、そのようなさまざまな変性意識体験の事例、体験領域-空間をさまざまに研究報告しています。
また、それが混乱した状態を起こした場合に、人々をサポートするシステム(スピリチュアル・エマージェンシー)について記したり、支援活動を行なっていたりするのです。
ここにおいても、充分な心理的統合が、変性意識状態を有効に使うための条件であることが理解されるのです。
8.変性意識状態(ASC)の治癒効果と超越的状態

ところで、興味深いことのひとつは、深い変性意識状態自体(その潜在能力を活かすこと)が、心理的・身体的な深い治癒効果・統合効果を持っているという点です。
変性意識状態(ASC)が、人間の深層的なプロセスを活性化し、本来持っている深い潜在能力(治癒能力)を引き出し、人間の心身を不可逆的に解放・変容・刷新してしまうという点なのです。
これは、深い変性意識状態が、普段は抑圧されている、身心のホリスティック(全体的)な機能を目覚めさせるためと考えられます。
それは、「意識」の高い階層とも関連している事柄なのです。
さきに引いたマズローの言葉をもう一度見てみましょう。
「至高経験は、厳密な意味で、症状をとり除くという治療効果を持つことができ、また事実もっている。わたくしは少なくとも、神秘的経験あるいは大洋的経験をもつ二つの報告――一つは心理学者から、いま一つは人類学者から――を手にしているが、それらは非常に深いもので、ある種の神経症的徴候をその後永久にとり除くほどである。このような転換経験は、もちろん人間の歴史においては数多く記録されているが、わたくしの知るかぎりでは決して心理学者あるいは精神医学者の注目の的となってはいないのである」(A.マスロー『完全なる人間』上田吉一訳、誠信書房) ※太字強調引用者
それは、変性意識状態(ASC)というものが、私たちが普段、排他的同一化(同調/固着)している日常意識(自意識)レベルの心理プログラムを解除すると同時に、私たちをより深い心身統合(調整/治癒)システムや、個人的自我を超えた領域に、私たちの「意識の帯域」を拡げるせいであると考えられるのです。
そして、これは歴史的には、前段で触れた晩年のA.マズローなどが「自己実現」を超えた領域として構想した「自己超越とトランスパーソナル(超個人的)な領域へとつながるテーマとなっているのです。
これはまた、変性意識状態を入り口にして、心身のより広大なシステム(全体性/ホールネス)に、私たちを導く興味深くかつ実践的なテーマでもあります。ホリスティック holistic なテーマがここにはあるわけです。
これらは広大な内容であると同時に、多様かつ多面的な要素を持ちますので、各要素については下記のそれぞれをご参考いただければと思います。
→【図解】心の構造モデルと変容のポイント 見取り図
→実際の変性意識体験の事例
→フロー体験とは何か フロー状態 ゾーン ZONE とは
→サイケデリック(意識拡張)体験とは何か 知覚の扉の彼方
→変性意識の治癒効果
→マズロー「至高体験 peak-experience」の効能と自己実現
→ブリージング・セラピー(呼吸法)の事例
→「聖霊 Ghost 」の階層、あるいはメタ・プログラマー ジョン・C・リリーの探求から
→映画『攻殻機動隊』ゴースト Ghost の変性意識
現代日本社会では、正しく理解されていませんが、この変性意識状態(ASC)を、きちんとあつえるスキルを磨くことは、私たちの能力や創造力、人生にとって計り知れない益をもたらすものなのです。




9.変性意識のもたらす変容と、人生で活かす方法
さて、筆者自身、心の諸領域を探索する中でさまざまな強度な変性意識状態(ASC)を体験してきましたが、それらは拙著『砂絵Ⅰ』の中に、実際の体験事例を多数書きました。
→拙著『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
それらのさまざまな経験を繰り返してわかったことは、さきのマズローの言葉にもあるように、変性意識状態(ASC)が私たちにもたらす変容作用や治癒作用、意識拡張作用は、場合によっては、たった一回の体験で、人生を一変させてしまうような強力な性質を持っているという点です。心身の基底的なプログラムを刷新し、書き換わえてしまうわけです。それは、その変性意識のタイプにもよりますが、そのような本質性があるということです。
さきに触れた、S.グロフ博士は、強度な変性意識を体験した多くの人々の証言を集めた結果から、その世界の見え方の変容を「あたかも、白黒テレビからカラーテレビに変わるかのようだ」と表現しています。これは実際にそのようなことが起こるのです。
また、数々のセッションを実施した経験から言えることですが、軽度のものでも、変性意識状態(ASC)は、私たちの奥底に確実に変容をもたらしてしまうものです。これら多くの観察を踏まえると、変性意識状態(ASC)というものは、気まぐれな不調和ということではなく、私たちの自然的本性(全体性/ホールネス)が備えている「自律的・治癒的・創造的」な素晴らしい潜在能力であるともいえるのです。
そして、これも経験上言えることですが(かつ一番重要な点でもあるのですが)、変性意識状態(ASC)の活用ポイントは、変性意識状態(ASC)と普段の日常意識状態(日常生活)の間に、きちんとした「心理的な連携や統合、往還(行き帰り)の通路をつくっていく(習熟していく)」という点なのです。
そうでないと、変性意識状態(ASC)は、単なる偶然的で奇妙な(面白い)エピソードということだけで、私たちに心理的な統合や変容、または超越をもたらすことがないからです(逆に解離と分裂をもたらすこともあるからです)。
私たちの人生を豊かにする創造的パワーにはなってはいかないのです。
そのため、拙著 『砂絵Ⅰ』の中では、日常意識(日常生活)と変性意識との行き帰り(往還)の方法を「行きて帰りし旅」という言葉で公式化しました。これが、ある意味、一番重要な点でもあるのです。
そのような、行き帰りと連携の取り組み(スキル)によってこそ、変性意識状態(ASC)の特異で強力な力を、日常生活と人生の中で価値ある創造的な能力に変えることができるのです。
これは、映画や小説でなじみ深い神話モデル「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」の中で、英雄が異界での冒険や試練から、「魔法の武器(霊薬・霊力)」をもって、この世界に戻ってくるという構造と同じことなのです。
→英雄の旅 (ヒーローズ・ジャーニー) とは何か
また、異界に行って、善きものを持ち帰ってくるという伝統的な「シャーマニズム」の構造と同じものなのです。
→伝統的なシャーマニズムと心理学的シャーマニズムについて
このようなわけで、日本では他にない「変性意識専門店」として、当スペースでは、変性意識状態(ASC)をあつかうスキルを、潜在能力を引き出し解放・活用するためのスキルとして、実践面・方法論面でも重視し、多くの方々に体験してもらったり、習熟してもらったりしているというわけなのです。
変性意識状態(ASC)の秘められた力を、ご自分でうまくあつかえたり活かせるようになるだけで、想像もつかなかったような形でご自身の人生を解放し、刷新させることが可能になるからです。
そのことで、クライアントの方がご自身で、自己の潜在意識や創造力を無尽蔵に引き出す真の魔法、マスター・キーを手に入れることができると考えているからなのです。
それが、当スペースがご案内する「流れる虹のマインドフルネス」の世界なのです。
【続編/上級編】
→「変性意識状態(ASC)とは何か advanced 編「統合すれば超越する」」
10.参考文献
Charles T. Tart (ed.) ; Altered states of consciousness . John Wiley & Sons Inc
W.ジェイムズ『宗教的経験の諸相』桝田啓三郎訳 (岩波書店)
A.ハックスレー『知覚の扉・天国と地獄』今村光一訳 (河出書房新社)
S.グロフ『自己発見の冒険Ⅰ』菅靖彦他訳 (春秋社)
S.グロフ『脳を超えて』菅靖彦他訳 (春秋社)
S.グロフ他『深層からの回帰』菅靖彦他訳 (青土社)
T.リアリー他『チベット死者の書 サイケデリック・バージョン』菅靖彦訳(八幡書房)
A.H.マスロー『完全なる人間』上田吉一訳 (誠信書房)
A.H.マスロー『人間性の最高価値』上田吉一訳 (誠信書房)
J.C.リリー『意識(サイクロン)の中心』菅靖彦訳(平河出版社)
C.G.ユング他『黄金の華の秘密』湯浅泰雄訳 (人文書院)
R.D.レイン『経験の政治学』笠原嘉他訳 (みすず書房)
M.チクセントミハイ『フロー体験入門』大森弘監訳(世界思想社)
S.コトラー『超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験』熊谷玲美訳(早川書房)
井筒俊彦『意識と本質』(岩波書店)
吉福伸逸『無意識の探険』(TBSブリタニカ)
吉福伸逸『トランスパーソナル・セラピー入門』(平河出版社)
菅靖彦『変性意識の舞台』(青土社)
津村喬『気功宇宙―遊泳マップ』(アニマ2001)
K.ウィルバー『意識のスペクトル』吉福伸逸他訳 (春秋社)
ロジャー・N・ウォルシュ『シャーマニズムの精神人類学』安藤治他訳(春秋社)
A.ミンデル『シャーマンズ・ボディ』藤見幸雄他訳 (コスモス・ライブラリー)
フレッド・アラン・ウルフ『聖なる量子力学9つの旅』小沢元彦訳 (徳間書店)
S.ラバージ『明晰夢』大林正博訳(春秋社)
ゲイリー・ドーア編『死を超えて生きるもの』井村宏治他訳(春秋社)
アブラハム.H.マスロー『人間性の最高価値』上田吉一訳 (誠信書房)
マーティン.A.リー他『アシッド・ドリームズ』越智道雄訳(第三書館)

11.関連記事
→「変性意識状態(ASC)とは何か advanced 編「統合すれば超越する」」
本セクションの続編、上級編となります。変性意識状態を充分に深めていくと何が起こるのか、本当にはどのような変容が可能なのか? そのような本当の変容を実現するためには何が必要なのか? そのような状態を常態化し、人生の創造力とするには、何が必要なのか? 注意点等々をまとめています。
→フロー体験とは何か フロー状態 ゾーン ZONEとは
スポーツ選手(アスリート)が、高いパフォーマンスを発揮するゾーン ZONE に入るといわれます。その状態が、心理学の定義でいう「フロー体験」です。フロー体験は変性意識体験の一種ですが、この記事ではフローを生む条件などについてまとめています。
→サイケデリック(意識拡張)体験とは何か 知覚の扉の彼方
音楽ジャンルなどで知られる「サイケデリック」という言葉(オズモンド博士の造語)が、本来意味している変性意識状態はどのようなものか、ここでは事例をもとに、その内容を見ています。本来、サイケデリック体験とは、とても深遠な体験を指していたのです。
→心理学的に見た「チベットの死者の書」
ティモシー・リアリー博士は、治療用幻覚剤であるLSDの体験と「チベットの死者の書」で書かれていることが近似していることに気づきました。そして、「チベットの死者の書」をリライトして、LSDセッションの導きの書とすることを思いついたのです。
→実際の変性意識体験の事例
ここでは、各種の事例、筆者自身が体験した変性意識を、拙著『砂絵Ⅰ』より引用しています。子宮回帰体験、人生回顧(ライフ・レビュー)体験、クンダリニー体験等の事例が取り上げられています。
→マズロー「至高体験 peak-experience」の効能と自己実現
→A.マズロー アイデンティティの極致としての至高体験
→「完全なる体験」の因子とA.マズロー
「自己実現」理論で有名な心理学者マズローは、晩年、「自己実現」のさきにある「自己超越」という状態について考察をめぐらせていました。そして、自己実現した人が頻繁に、また普通の人々でもしばしば経験する「至高体験 peak-experience」という状態についても研究を深めていました。そして、「至高体験」は誰にでも起こるし、その体験が私たちを一時的に自己実現達成者にすることについて述べています。ここでは、それらについてまとめています。
→気づき awareness と自己想起 self-remembering
→グルジェフの自己想起 self-remembering の効能
気づき awareness とは、マインドフルネスの状態ですが、一般にはその状態がどのような心理状態・意識状態か、少しイメージがつきにくい点があります。ロシアの秘教的思想家グルジェフが、意識成長(進化)の訓練法として提唱した「自己想起 self-remembering」(これ自体も普通には難解ですが)を参照すると、気づきやマインドフルネスの状態が少し明確に焦点化されると思います。
→メスナー 登山体験 その意識拡張と変容 メスナーの言葉から
登山は、生と死が隣接する過酷な状況に遭遇することもあるため、特殊なタイプの変性意識状態に入りやすいものです。ここでは、著名な登山家ラインホルト・メスナーによる言葉を集めてみました。
→変性意識の治癒効果
変性意識状態は、それに深く入ることで、強い癒しの効果を持つ場合もあります。ここではその原理について考察しています。
関連記事2
→映画『マトリックス』のメタファー(暗喩) 残像としての世界
→明晰夢の効力 2 映画『マトリックス』の世界へ
映画『マトリックス』は、変性意識状態が教えてくれる、私たちの現実世界をとてもうまく感覚的に表現した作品となっています。絵空事ではなく、『マトリックス』的世界を生きる方法について書いています。
→映画『攻殻機動隊』ゴースト Ghost の変性意識
→映画『攻殻機動隊』2 疑似体験の迷路と信念体系
『マトリックス』の元ネタになった映画『攻殻機動隊』も、変性意識状態の心を考える上でヒントを多く与えてくれる素晴らしい作品となっています。ここでは、作中に語られる(心の)「上部構造にシフトする」ことやその他示唆に富む内容について検討を行なっています。
→モビルスーツと拡張された未来的身体
有名なアニメ『機動戦士ガンダム』(1stガンダム)に登場した「ニュータイプ」のコンセプトも、変性意識状態と知覚拡張について、私たちにさまざまなヒントと方法論的な素材を与えてくれるものです。
▼変性意識状態(ASC)のさまざまな可能性について
→ 「聖霊 Ghost 」の階層、あるいはメタ・プログラマー ジョン・C・リリーの冒険から
→『諸星大二郎の『生物都市』と鉱物的な変性意識状態(ASC)
→X意識状態(XSC)と、意識の海の航海について
→ロートレアモン伯爵と変性意識状態
→宇宙への隠された通路 アレフとボルヘス
【ブックガイド】
変性意識に入りやすくする心理療法(ゲシュタルト療法)については、基礎から実践までをまとめたこちら(内容紹介)↓
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
また、変性意識状態(ASC)への入り方などその詳細な概要と実践技法は入門ガイド↓
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
をご覧下さい。
また、変性意識状態のよりトランスパーソナル(超個)的で広大な世界を知りたい方は、実際の体験事例も含めた↓
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。
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