マイルス・デイヴィスの存在力・共振力

さて、拙著『砂絵Ⅰ』の中では、その人の持つ、ある種の「存在 Being 」の力が、独特の力を発揮する事柄について少し触れました。
拙著『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

ここでは、そのような存在力と創造性とに関わる顕著な事例として、マイルス・デイヴィスを取り上げてみたいと思います。

マイルスは、「ジャズの帝王」とも呼ばれる著名なジャズ・ミュージシャン、トランペット奏者であり、ジャズの歴史を創った巨人の一人ですが、そんなマイルスを聴く人が、その多様な共演者について不思議に思うことがあります。
(マイルスは、その長い経歴の中で、さまざまな共演者たちを持ちました。
そして、マイルスに見出された、多くの若く無名な共演者たちが、マイルスとの共演を通して、その後に、著名なスター・プレイヤーになっていきました)

マイルスとともに活動にした数多い共演者たちは、なぜ、彼らの生涯最高の、頂点の演奏(プレイ)を、
彼ら自身のソロ作品ではなく、「マイルスとの共演の時に」持ったのだろうか? 
彼らは、マイルスからどのような影響(作用)を受けたのだろうか?と。

ここには、創造性に関する「ある秘密」があるように思われます。

そのような謎に、光を当てる興味深いドキュメントがあります。

1970年のワイト島のミュージック・フェスティバルの映像『エレクトリック・マイルス』に付録の特典映像として付けられた、生涯の共演者たちによる、マイルスについてのさまざまな証言です。
そこには、共演と創造性にまつわるさまざまなヒントが、当事者たち(共演者たち)から生々しく語り出されているのです。

「あれほどパワフルな人と同じ空間にいると、自分のパワーも自然に出てくる」 

デイヴ・ホランド

「歴史を振りっても大勢が言うと思う。
マイルスとの演奏は、誰も、他で再現できなかった。
その時しかできなかったんだ。
変わったわけじゃない。
マイルスと一緒に演奏した時は、彼に力を引き出されたんだ」

デイヴ・リーブマン

「マイルスは素晴らしい。ずっと自分を与え続けたんだ」

ジャック・ディジョネット

「マイルスは僕らに何かをくれたんだ。言葉では表せないものを。
マイルスと組んだ人と会って、マイルスの話題が出ると、思わず、皆頷くんだ。
共通する体験があるから分かるんだ。
マイルスとの仕事で得たものは、上手く言葉にできないけれど、
なんというか、一度経験すると忘れられない」

ハービー・ハンコック


ここには、私たちが、創造活動の中でもつ、「共創造の不思議な作用(可能性)」について、多く教えてくれるものがあるのです。

ブックガイド】
気づきや変容、変性意識状態(ASC)を含むより総合的な方法論については、拙著
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。