心身一如 心身一元論的なアプローチ Ⅰ

◆心身一元論 ―全体論

さて、思い起こしてみて下さい。
私たちが「初めて会う人」に会った時、何をもってその人の「人格」を感じとり、「この人は、信用できる」とか、「この人は、信用できない」とか評価をくだしているのでしょうか?

私たちは、その人の表情やしぐさ、声の調子、全身から発散する雰囲気(緊張等)を感じとり、その人を評価しているのです。

さて、人間の本質を見る時に重要なのは、その人の「話している内容(コンテンツ)」ではありません。
その人の「話している状態(プロセス)」、その人の「話し方」とその調子・雰囲気にその人の本質が表れているのです。
このことを、私たちは人生の経験上、知っているのです。

◆自己一致と不一致

自己一致 self-congruence という言葉があります。その人の自己概念と実際の経験とが、つまり意識面と無意識の欲求(感情)とが一致している状態を示す言葉です。カウンセリングで使われるカール・ロジャーズの言葉です。

ところで、よく自己一致している人は、自然なゆったりした感じ」を、人に与えます。
私たちに、泰然とした、心地良い調和の振動(波動)を感じさせます。
自己一致とは、自分自身の存在 Being に、自信をもって矛盾なく根ざすことによって可能となる存在状態です。

一方、私たちの大部分は、自己一致していないところを色々と持っていますが、特に強く自己一致していない人というものは、その不調和な感じがおもて(態度)に出ています。
その自己不一致・違和感・不協和音が、からだの緊張や不自然さ、どこかぎこちないこわばりとして、おもてに雰囲気として発散されていますどこか不調和な居心地の悪い波動を感じさせます。
私たちが「嘘をついている人」を見破れるのはその調和な振動(波動)のせいです。

では、この不調和観、不一致感はどこから来るのでしょうか?

◆身体(肉体)という表現の経路(チャンネル)

さて、この不調和感・不一致感は、別に記した複数の自我状態葛藤状態からきているのです。

そして、この葛藤状態は、身体の雰囲気(緊張・こわばり)や、声の調子(緊張・内容と音声の不一致)、言葉(話している内容)と身体表現との不一致などとして現れるものです。

大体のところ、人は自分が無自覚に同一化している自我状態を「主体」として、その他の自我状態たちを抑圧して生活しています。
ところが、抑圧された自我状態たちは、黙って、おとなしくしているわけではありません。
抑圧された自我状態たちは、身体(肉体)という回路(チャンネル)を通して、自分を外に表現してくる
のです。

そのため、他の人々は、その身体に現れた別の自我状態にその人の本音を感じたり、その抑圧に気づき、欺瞞的な違和感を感じるというわけなのです。
つまりは、自己不一致しているその裂け目に、その人の分裂が見え隠れしているというわけなのです。

また、この事態は、セッション(ワーク)における介入技法としても、対応していくということになっているのです。
「ボディシグナルへの介入」


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