「自信がない・自己肯定感が低い・生きづらさ・心の葛藤」の構造と創造力

さて、ここでは、よくご相談いただく内容、
「自信が出ない」
「自己肯定感が低い」
「劣等感がある」
「生きづらさがある」
「心の葛藤が苦しい」
という現象について少し書いてみたいと思います。

そして、それが「何かが欠けている。不足している」ために起こっているのではなく、むしろ逆に、「心のパワーと創造力のために」起こっている、ということについてご説明してみたいと思います。
そして、結論的には、その気分や感情を、現在の苦痛ではなく、本来の快いものに戻して、パワーと創造性に変えていくことが可能であることについて解説したいと思います。

そのため、今、ご自分のうちに苦しみがあるとしても、それは表向きの姿、仮の姿であると理解し、パワーと創造性のゆえの苦しみであると考えていただければと思います。

◆苦しみの構造(原因)――創造力と自律性の発現

ところで、私たちの心の構造については、別のところにまとめてあります。
【図解】心の構造モデルと心理変容のポイント 見取り図
私たちの心には、普段、私たちが自分だと感じている「顕在意識(日常意識)」の部分と、私たちにもよくわからない「潜在意識」の部分があります。そして、私たちの心の大部分は「潜在意識」にあるのです。

ところで、上記の「自信が出ない」「自己肯定感が低い」「劣等感がある」「生きづらさがある」「心の葛藤が苦しい」などの気分や感情は、主観的な印象としてはネガティブで、エネルギーが不足している感覚、力が湧かない感じとして体験されています。
それを、私たちは「顕在意識」でなんとなく体験しているわけです。
ひとかたまりのボンヤリとした感情・気分として。
通常、「顕在意識」で感じているのは、「力がない」「力が足りない」「エネルギーが不足している」というイメージです。
しかし、このような「不足感の印象」は、私たちの顕在意識に届く情報が、そのように変化して気分表現(知覚)されているだけで、実は、エネルギーの実態(ダイナミスム)としては少し事情(実態)が違うのです。

そのことは、物理的な現象を考えてみればよくわかります。
エネルギー自体がなければ、そこに何も起こらないのです。
「感情的なざわめきがある」ということは、実は、その背後に力強いエネルギーがあるということを意味しているのです。

ということは、「気力が出ない」「エネルギーが湧かない」「自信が出ない」「自己肯定感が低い」などという場合にも、実は心の中では、逆に非常にダイナミックで、エネルギッシュな運動が起こっているということなのです。

そして、起こっていることを要約すると、それが「葛藤」ということなのです。
葛藤とは、心の中で、相反する複数の欲求や感情が衝突したり、反発しあっている状態です。

主観的には、単に気分の落ち込みや抑うつ感、欠落感、空虚感として、まるでよどんだ沼のように「単一の感情」として感じられるものも、実は、複数の感情の葛藤なのです。
深い領域では「お前はダメな奴だ!」と力づくで自己を否定しようとしている(ダメ出ししている)心の一部と、「それは違う!」とそれに反発する心の一部が、激しく争っているがゆえに現れている感情(気分)なのです。

実は、激流のようなエネルギッシュ運動なのです。
2つの激しい衝突が、疲労感やノイズである苦痛な感情の原因なのです。
大元は、複数の感情のダイナミックな激突、からまりあいなのです。

しかし、これは普通には、感じとられにくい、分かりにくい点です。
私たちは、現れている感情を「単一の一種類の感情である」と認知する癖を持ってしまっているからです。
池の上から、水面下の魚たちを見ているような感覚です。
そのため、現れている不快で苦痛な感情が、ひとつの原因からくるものと思ってしまうのです。

不快で苦痛な感情が「複数の感情のからまりあい(葛藤)」であることを知り、ひとつひとつの感情を切り分けて体験できるようになると、私たちの苦痛も姿を変えていくことになるのです。

単一な不快な苦痛は、複数の欲求(感情)の衝突による感覚だったからです。
心理療法のセッションでは、そのような感情を切り分ける体験を行なっていくことになるのです。
そのため、苦痛や苦しみがなくなっていくことになるのです。
エンプティ・チェア(空の椅子)の技法Ⅱ 葛藤解決

心理療法においては、心の内側に入ることにより、喩えると一種「透視するように」心の内部のからまりが見えてくるのです。
そして、絡まったひとつひとつの感情や欲求を体験できることとなります。
その結果、心のからまりがほどかれ、エネルギーが解放されていくことになるのです。
苦痛が消滅するのです。

そして、さらにその複数の感情や欲求を、ひとつひとつ体験していくと理解できてくることがあります。
つまり、さまざまな複数の感情や欲求は、非常に積極的な意味(意図)をもって、心の中に生まれていたことに気づくことになるのです。
「お前はダメな奴だ!」と自己否定的に感じられた欲求にも、実は、背後の隠れた意図があることが実感として分かってくるのです。愛ある叱咤を実感できたりするのです。
その感情にはそれはそれで、とても創造的で肯定的な意味があったのです。

心理療法のセッションの中では、そのような感情の内訳への気づきが深まっていくことになります。
つまり、実は、私たちの心は、創造的な意志を持っているがゆえに、心の葛藤や苦痛を生み出していたといえるわけなのです。
そのことを、意識に知らせるために、苦痛という信号をつくり出していたというわけです。

冒頭で、今、ご自分のうちに苦しみがあるとしても、それは「多様なパワーと創造性のゆえにそのようになっている」と考えていただければと書いたのは、まさにそのような意味合いからなのです。

そして、私たちの心の「葛藤や苦痛は、創造力のあかし」ともいえるということなのです。
そのため、苦しみを持っている方は、ご自分にパワーと創造性があるがために、そのようなことが起こっているのだとぜひ自信をもっていただければと思います。

そして、このような苦痛は、自分の心の深い部分に触れざる得ないことを通して、逆に(反転して)、普通に呑気に生きている人たち以上に、爆発的な創造力を発揮する機会(要因)となるのです。
映画や小説のことを思い出してみて下さい。
主人公が平穏に呑気に暮らしているだけの物語などは存在しません。もし、主人公が平穏に呑気に暮らしている小説などあったとして、読みたいと思うでしょうか?
「主人公が、事件に巻きこまれる危機、葛藤と苦しみの中で、主人公の潜在能力が爆発して、新しい人生の局面が切り拓かれていく」というのが、物語の定石です。
これらの物語のパターンは、私たちの心の葛藤と創造力の真相を意味しているのです。
英雄の旅 (ヒーローズ・ジャーニー) とは何か

このような心の苦しみとパワーに丁寧に向き合い、葛藤を解決し、ときほぐしていくことで、私たちは、より大きな創造力を自らのものとして、私たちの人生に飛躍を起こしていくことができるようになのです。
そのような意味で、苦しみと葛藤は、創造力の魔法のサインなのです。


【ブックガイド】

ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめたこちら
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
気づきや、変性意識状態(ASC)を含むより総合的な方法論については、拙著
入門ガイド
『流れる虹のマインドフルネス―変性意識と進化するアウェアネス』
および、よりディープな
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

↓動画解説「自信のなさ・自己肯定感が低い・生きづらさ・心の葛藤」の構造と創造性

↓動画「ゲシュタルト療法と生きる力の増大」