「明晰夢」の効力 夢の中で掌を見る

さて、人類学者C.カスタネダの本の中に、「夢の中で、自分の掌を見る」練習をするという有名な話が出てきます。これは、シャーマニズムの訓練として行なうものです。そして、拙著の中では、そのことが導く、私たちの心の未来についても記しました。
拙著『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

さて、「夢の中で、自分の掌を見る」などとは、一見すると、非常に奇妙な(突拍子もない)訓練にも聞こえますが、サイトや拙著で取り上げているような、気づき awareness の訓練や、さまざまな変性意識状態(ASC)との行き来を、数多く繰りかえしていくと、だんだんと実際にそのようなことも起こる(できる)ようになってくるものです。

夢の中で、それが夢だと気づきながら行動している夢、いわゆる「明晰夢 lucid dream 」の状態です。

「明晰夢 lucid dream 」は、私たちの日常意識と潜在意識とが他にないまじかさで交錯している状態であり、意識や潜在意識のさまざま事柄(行動・知覚状態)試したり、検証したりするまたとない機会となるのです。

また、夢のナマな創造力にじかに触れられる不思議な状態であり、私たちの心の未知の仕組みを知ることのできる貴重な機会となっているのです。
明晰夢は、それ自体としても、さまざまな状態・世界を持っています。
それは、私たちの知らない、さまざまな世界に通じているのです。

また、明晰夢は、その慣れや習熟に従って、私たちの心にさまざまな深い変化を引き起こしてきます。
それがために、古来から、世界中の瞑想技法の中で、この状態が特記されて、利用されていたわけなのです。

特に、夜の夢の中における「気づき awareness 」の力の醸成と、昼間の生活の中における「気づき awareness 」の力の醸成とは、表裏を成してつながっており、その相乗的効果(質性の変化)をとりわけ顕著に現してきます。
私たちの世界を生きる〈意識〉のあり様が、深い次元で変容してくるのです。

明晰夢と夢見に関して、シャーマニズムでは、次のような三段階の進化を言います。
第一段階「夢の中で、それが夢だと気づくこと」
第二段階「目覚めている時に、この世界が夢だと気づくこと」
第三段階「その(この)夢から、覚めていくこと」

このように、明晰夢に関する訓練は、その先の世界において、私たちに非常に深い未知の流動性と解放をもたらしてくることになるのです。

そのため、当スペースでは、このような明晰夢の利用を、意識拡大のためのさまざまな機会として、重要なものに位置づけているのです。

 

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については基礎から実践までをまとめた解説、拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧ください。

気づきや変容、変性意識状態(ASC)を含むより総合的な方法論については、
拙著
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。