妨げのなさの感覚 生きづらさと葛藤の解決
さて、ゲシュタルト療法を継続的に行なっていくと顕著に現れてくるある体感があります。そのことについて、まずはじめに見ておきたいと思います。ゴールや着地点がわかるとイメージがつきやすくなるからです。
ゲシュタルト療法を行なっていくとやって来るもの、それは、
①生きる力(エネルギー)の増大
②妨げのなさの感覚
というものです。
ゲシュタルト療法をやっていくと、私たちは、自分が以前よりも純粋に物理的にエネルギーに満ちていると感じはじめるというわけです。
また、自分を妨げたり押しとどめてきたりする内部の妨害する力が、少なくなったのを実感するようになるのです。
その結果、自分が、軽々と行動を起こしやすくなったと感じるようになるのです。その仕組みは、図にしてみるとその構造的なイメージがつきやすくなります。
普段の私たちは、自分の中に、なんらかの抑制感や葛藤というものを持っています。これは、人間の成長上、自然に(文化的に)生ずるものといえます。
フロイトの言葉を使えば、「超自我 super ego 」の要素ともいえるものです。それは、私たちを社会的な存在にするのに必要な要素でもありますが、必要以上に働く場合に葛藤や苦痛、生きづらさを引き起こします。
ゲシュタルト療法では、トップドッグ(ボス犬)という言葉で、この部分を表現したりもします。
内側から表出しようという欲求(欲求A)が出て来ても、外側の別の欲求(欲求B)によって過度に押さえられてしまうという形(システム)です。
そして、このように「やるべか、やらないでいるべきか」「やりたいけど、できない」といつも内部で押し問答をしてしまっていることが、私たちの一般的な姿(問題)であるわけです。
このことは、主観的にはある種のエネルギーの不足感や疲れ、疲労感として体感されたりもしています。
しかし実はこれは、エネルギーが純粋に不足している(足りない)のではなく、悶々とした葛藤によって無駄に使ってしまっているというのが実情なのです。
エネルギー不足ではなく、エネルギーの浪費とロスが実態(問題)であるのです。
これが普段の抑制感をもった私たちの姿だといえます。
それが、ゲシュタルト療法を続けていくと、欲求Aと欲求Bとの間に対話と交流、融解が起こり、この二つが融合・統合していくという事態が起こってくるのです。
そして、その結果として、欲求Aは(多少変容してA´になりますが)よりダイレクトに、自己の欲求を表出できるという事態が実現されてくるのです。
この際、妨げるもの、妨害するものとして働いていた欲求Bも欲求B´と変容し、妨害することなくむしろ別の欲求として協働的にサポート的に働いてくることに変わっていくのです。
つまりは、主観的なイメージとしては、元来自分のやりたいこと(欲求)がバージョンアップして、よりストレートに行なえている感覚や、表出できている感覚が生まれてくるのです。
そして、エネルギー状態は、葛藤による浪費やロスがなくなったため、自分のために自由に使える量が増えた感覚を持ってくるのです。
これが、「エネルギーの増大感」として感じられてくるなのです。
エネルギーの増量感です。
また、内部で葛藤的に抑制するものがなくなったため、「妨げのなさ」という感覚が生まれてくることにもなるのです。
自分の中の「妨害感」がなくなった感覚です。分裂感がなくなったのです。
その結果として、自分が「ひとまとまり」のエネルギーの塊になった感じがしてきます。
統一したベクトル(方向性)を持った、全身全霊の能動的積極的なエネルギーの塊です。
そして、このような統合が進んだことにより、内部での葛藤に費やされなくなった膨大な余剰エネルギーは、外の現実世界に溢れだし、他者や世界の物事に向かうことができるようになるのです。
まわりの人々、他者や世界に、よりベクトル(方向性)をもって集中的に関わり、これを変えるように働きかけるようにもなるのです。
少々の障害など気にせず、突破できるエネルギーや能動的な意欲が湧いてくるのです。
その結果、私たちは人生自体を目覚ましく変えていくようにもなっていくのです。これがゲシュタルト療法を進めていくと現れてくる顕著な特性といえるものなのです。
◆エネルギー水準の高まり
さて、このような「エネルギー感の高まり」は、図にするとイメージしやすいものにもなります。
私たちは、通常、エネルギーの或る平均値(値ゼロ)を持っています。
そして、調子が良いときもあれば悪いときもあるということで、そのゼロの上下を、上がったり下がったりしています。
それが、ゲシュタルト療法を通してエネルギーが解放されてくると、以前に較べて恒常的に高いレベルにいつもいることができるようになって来るのです。
ある種のエネルギーの「高原状態」ともいえるような事態の達成です。
さて以上、ゲシュタルト療法を継続していくと、生まれてくる顕著な成果を体感覚という側面から見てみました。
このようにして、ゲシュタルト療法の技法は、人々の人生を変えていくのに直接的・決定的な形で役立っていくこととなるのです。
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