発声とエネルギーの通り道

さて、別のところで、体験的心理療法のボディワーク的アプローチやゲシュタルト療法心身一元論的アプローチを検討する中で、身体面に現れてくるその人の隠された欲求(自我)に気づくことの重要性について触れました。

また、そのような切り口から技法的な介入ができることを記しました。ここでは、その関連で、「声」と「発声」について見てみたいと思います。

さて、声は、呼吸の要素と直結しているため、感情の操作という側面で、その人の心理的特徴として、姿を現しやすいものとなっています。

声は、感情の質を伝えます。口先だけの浅い声は、浅い感情を伝えます。肚の底から出る深い声は、深い身体的な感情を伝えます。

声の響いてくるその人の体の深さ、その人の感情のレベルも、表現しているのです。

浅い声で話すその人が、本当に物事を感じられているのか」「本気でそう思っているのか」が信じられにくいのは、そのせいです。

その人の、自分自身との感情的つながりが、そこに現れているからです。

そのため、その声の質に、深く聴き入る必要があるのです。

そのことを、人は、普段、直観的に感じとっているのではないでしょうか。

その人の声が触れている肉体の深さ、感情のレベルというものに、なんとなく気づいているということです。

さて、これは、音楽におけるヴォーカルの発声などを、例にとるとわかりやすいと思われます。

肚の底から、肉体の深いところから、発声(咆哮)するヴォーカルには、こちら聞き手の肉体の深いところ(肚)に、響く力・エネルギーがあります。

一方、口先だけで歌っている歌手には、不全感やどこか気持ち悪さがあります。

自己一致して、心身一元的に解放されているヴォーカルや、咆哮には、エネルギーのなめらかさや肚の底から解放される心地よさが、あります。

とりわけ、大地とひとつとなるような、身体の深さや大地のエネルギーと結びついた音楽は、人に力と癒しをもたらします。

音響と音楽の核(質)に、肚の深いところまで響き、大地からエネルギーを取り込むような、歌の力の流れがあるのです。

 

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ゲシュタルト療法については基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
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『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。