◆ゲシュタルト療法における心身一元論的解放
さて、ゲシュタルト療法における心身一元的論的なアプローチでは、身体チャンネルを通して、無意識のうちに多様な自我状態が現れてくることについて見ました。
そして、ここからが重要なのですが、ゲシュタルト療法においてはその考え方から、多様な自我状態の深く十全な表出・表現、深い十全な感情表現というものを探っていきます。
意図せずに身体チャンネルに現れる自我とは、普段は抑圧されている(分裂した)「自我状態」だからです。
そのため、人格の心理的統合のためには、その抑圧されている自我状態に充分な表現の場を与えてあげることが必要だからです。
そして、その感情表現の際にも、この「心身一元的な視点」がとても重要なことになるのです。ヴィルヘルム・ライヒが、筋肉の鎧をもつ防衛的な硬化した身体には、充分な感情体験が起きないことに気づいたように、充分な感情体験・表現とは、充分な物理的・身体的運動(表現)が必要だからです。
→ライヒと心身一元論的・ボディワーク的アプローチ
そのため、逆に、抑圧だけではなく、解放の面においても、ゲシュタルト療法では、クライアントの方の感情表現の際の、身体の表現度合い(レベル)に注目します。
充分な身体表現ができていない場合、つまり身体的な緊張や反応が現れたりしている場合は、そこに課題があると見ていくのです。
そして、それに応じたさまざまなアプローチをとっていきます。充分な表出が行なわれるようにサポートするわけです。
そして、実際、ゲシュタルト療法においては、クライアントとしてそのような心身一元的な全身全霊な表現を繰り返していくと、表現と感情の流れが滑らかになっていきます。
エネルギーの流れがよくなり、身体の緊張や硬化が解除してくることになります。
自分の身体感覚が、全然違ったものに変わっていくのが実感されることになるのです。
呼吸がなめらかになり、喉や胸がひらき、骨盤の詰まりがなくなります。
いつも現れていた不快な身体症状(胸が苦しくモヤモヤする、お腹が痛い、頭痛がする等)が消滅していきます。
身体全体の感受性が高まり、快楽の感度も高まっていきます。
その結果、使えるエネルギー量が爆発的に増大して、エネルギッシュになるのが実感できるのです。
自分のエネルギーが「流動化」して、流れるような身体感覚、「変容」を感じるようになるのです。
ゲシュタルト療法をやっていると、人が端的に元気になるというのは、このような物理的なエネルギーの増大という側面もあるからなのです。
このように、ゲシュタルト療法は、心身一元論的なアプローチなのですが、クライアントの方の進化に従い、心理的にも肉体的にも、全身のしなやかな解放が進んでいくのが実感できるのです。
心理的な統合の進化が物理的にもわかっていくことになるのです。
実は、このことが、ケン・ウィルバーなどが指摘する、心身一元論的セラピーを充分に深めると、トランスパーソナルな領域が開いてくるという事態と深くつながっているのです。
【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧下さい。