X意識状態(XSC)と意識の海の航海について

さて、当サイトでは、変性意識状態(ASC)について、さまざまな検討を行なっていますが、当スペース独自の用語で、X意識状態  X states of consciousnessというものがあります。

この意識状態は、特に新しい意識状態を定義したものではありません。
それは、日常意識と変性意識状態の間にあり、その肯定的で、創造的な状態が働いている状態(帯域)を指して使われている言葉です。
単なる変性意識状態と呼んでしまうと、範囲がひろすぎるためその働きの焦点が定まらないからです。一方、 フロー体験ほど意識に近い完璧な調和性や一貫性を持っていない状態だからです。

しかしながら、その間の帯域の中に、比較的恒常的で、拡張された意識状態というものが成り立つのです。
それを、作業仮設的に「X意識状態」と呼んでいるわけなのです。
このX意識状態を足がかりに、私たちはさまざまな意識状態や創造的状態をつくりだしていくことができます。
安定した「意識の拡張した状態」です。

喩えると、日常意識とは人工池の上に小舟を浮かべた状態です。
安定しているけれど、その他の世界を知っている人から見ると狭苦しく生命力の乏しい白黒の世界です。しかし、これが多くの現代人が生きている世界です。

一方、強度な変性意識状態(ASC)とは、海に上にいる世界です。夢の中の世界をイメージすると分かりやすいかもしれません。激しい波に翻弄されていたり溺れることさえある世界です。普段よりは、強い剥き出しの野生感覚や感情がある世界です。
そして、喩えると、X意識状態とは運動をコントロールして、海を泳いだり海を航海している状態です。日常意識よりはダイナミックで生き生きとした世界にいるのです。

私たちが、変性意識状態ASC)を山ほど体験して、その扱いに慣れてくると、私たちの心身は解放され、意識は拡張されて、いくらか恒常的にそれらの状態が保てるようなります。X意識状態とは、変性意識状態ASC)と日常意識とが部分的に連携され、前意識的に交錯し、安定している拡張意識状態なのです。

ところで、現実的な問題として、変性意識状態ASC)を考える際に重要な点はそれらが、日常意識と一定の統合的なつながりを持ててはじめて、生活の中で創造的な意味(価値)を持つということです。

偶然的で散発的な変性意識状態は、多くの場合、興味深い挿話以上にはなかなかなりません。不思議なサイケデリック体験は世界中で体験されているのに、創造的なアウトプットはわずかなのはそれが理由です。

X意識状態(XSC)とは、そのような意味で、日常意識と変性意識状態とが、情報的交流や凝集された焦点化を持っている状態です。
心理構造的に言えば、変性意識状態ASC)について、学習の階層(ベイトソン的な意味で)が少しあがった状態といえます。

◆X意識状態の生成と夢見の技法

当スペースで使う技法に「夢見」という概念があります。
これは、日常意識と変性意識(夢の状態)を、意図的に流通・均衡させようという技法的・姿勢的方法論です。
→拙著『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

この夢見の技法のような態度(訓練)が、X意識状態を育てるともいえます。また、X意識状態が育つと、夢見の技法自体もより安定し、高度化します。

つまり、X意識状態は、両方の意識状態を、数多く行き来(往還)する体験を持ち、その往還に習熟することで、育っていく学習階層であるのです。その訓練の中で、日常意識と変性意識とが情報的交流や融合を持ち、二者の間に均衡的がなされている状態ができてくるのです。
ゲシュタルト療法を進める中でも、この点に意識すると育っていく状態です。

さて、ところで、プロセスワーク(プロセス指向心理学)では、極限意識状態extreme states of consciousnessと呼ばれている意識状態があります。

それは、精神病的な圏域、いわゆる狂気の状態のことです。通常は、一元的に否定的に価値づけられるその状態を、extreme(極端)と呼ぶことで脱価値化して、中立化しようとしたのだと推察されます。
このような中立化は、実際的にその意識状態を積極的にとらえるのに役立ちます。

さて、X意識状態は、extreme states of consciousnessのように、場合によっては変性意識状態(ASC)のコントロールしづらい極端な力の流出(奔放・過剰)に触れつつも、主体に安定して肯定的な価値をもたらす状態です。

しかし、部分的には、極限意識状態の一部とも重なる危険をはらんでいる要素も持ちます(変性意識状態自体は、良いものでも悪いものでもありません。創造的な事柄の中でも、犯罪の中でも働いているものです)。

極限意識状態 extreme states においては、喩えると、主体が狂気の荒波や大波に、大部分溺れてしまっているとするなら、X意識状態 X states は均衡を維持しつつ、溺れることなく、その大きな波を泳いだり、波に乗っている状態といえます。操作的・統御的に、肯定的なエクスタシィ(意識拡張)や、創造性発現の要素を保持している状態といえます。
→参考事例「聖霊」の階層その3 意識の振動レベル ジョン・C・リリーの冒険から

喩えると、エクストリーム・スポーツのスキルのように、危険と隣りあわせで、変性意識から極限意識の間を波乗りしている状態ともいえます。

そのため、エクストリーム・スポーツをXスポーツと呼ぶように、この状態を「Xステーツ(X states)」と呼んで、生活の中で現れるこの種の体験領域に、意識的に焦点化していくことに、またそのスキルを磨くことを当スペースでは方法論としているのです。

※変性意識状態(ASC)やサイケデリック体験、意識変容や超越的全体性を含めた、より総合的な方法論については、拙著
『流れる虹のマインドフルネス―変性意識と進化するアウェアネス』
および、
『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

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