存在自体が幻想的な古書店―古書ワタナベ

 よく、幻想小説や怪奇小説などの設定などで、「普通には、たどり着けない店」の設定といったものがあります。
 何かの偶然や、何かの符号で時空が調整されないと、そこにたどり着けない「霧の向こうの」世界にある店です。
 
 その古書店(古書ワタナベ)を見つけた時は、一瞬そんな気分になったものでした。
 しかし、その店は、決して珍しい場所にあるわけではなく、中野ブロードウェイの4Fにあったのです。

 20年以上前、『大予言』という怪しい(有名な)精神世界系の古書店がある時分から、また、まんだらけがそこを引き継いで、まわりに古書店舗を拡充した時分からも、ブロードウェイの4Fには、たまに足を運んでいましたが、こんな店があることには、まったく気づかなかったのです。

 もともと、シャッターが下りている率の高いフロアなのですが、狭い横道に、最初この店舗を見つけた時は、「アレ?こんな場所に、こんな店があったんだ…」っという、幻想小説によくある場面(セリフ)となったのでした。

 薄暗い入り口をした、5坪もないくらいの小さな店舗です。
 島棚が真ん中にドンとあるので、コの字型に通路があるわけですが、本が積み上がっているせいで、通路幅は異様に狭く、人がすれ違えないほどです。

 そんな狭い店なのですが、その幻想感/非現実感を際立たせていたのは、店内を高いところまでびっしりと埋め尽くしている商品の、その驚異的な品揃えの質(良さ)なのでした。

 昔出ていた外国文学や前衛文学がメインで、単行本、全集もの、文庫本と非常に細かくよく集められているのです。ハヤカワ文庫なども昔のものをよく揃えています。当然、サンリオSF文庫なども…。しかも、決して高くない価格帯で売っているのです。 

 私自身、そのあたりのジャンルは昔、苦労して集めたので、見知った物も多いのですが、「こんな物まで見つけてきたんだ」と感心する物も多いのです。若い時に来たなら、とても感動しただろうと思ったのです。
 明らかに「よく知っている人」が集めたという感じです。
 そんなレア本が、狭い空間にひしめき合っているところが、幻想的で、幻覚的な雰囲気をさらに高めていたのです。

 店舗が小さいので、在庫量は多くないのですが、昔、早稲田にあった文英堂書店や、神田の田村書店といった要素(質感)を感じさせるのです。そして、在庫が多くない分、逆に、「濃度」や「濃密さ」をつよく感じさせる結果にもなっていたのです。

 店主は、人なれのしない、内気な感じの人で、聞くと、ずいぶん昔に開店しているし、週二日の定休日以外は、普通に営業しているという風な口ぶりなのです。
 しかし、実際には、店はあまり開いていないのです。

 その後も、そのフロアに行くごとに、店が開いているか見ていますが、たまにしか開いているのを見ていません。
 開いていると、店を覗くのですが、在庫は動いているようなので、密かに営業はしているのでしょう。
(出張で、出店しているみたいなことも、店主は話していました)

 ご興味がある人は、電話で営業を確認して(通じるかわかりませんが)、寄ってみるのもいいかもしれません。

変性意識状態(ASC)や意識変容、超越的全体性を含めた、より総合的な方法論については、拙著
『流れる虹のマインドフルネス―変性意識と進化するアウェアネス』
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。
ゲシュタルト療法については基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧ください。

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