さて、シャーマニズムのメディスン(薬草)の中には、さまざまな種類がありますが、その実際の効果の性質、変性意識状態(ASC)にも、さまざまな個性や特徴があります。
それぞれのメディスンの、個性や作用の特徴をよく理解しておくことで、私たちはそこからさらに深く、いろいろな事柄(意識形態、智慧、エネルギー)を学ぶことができるようになるのです。
その際、さまざまなタイプのメディスンを体験して、その特徴を感覚的に比較していくことで、より理解を深めることができます。
また、そのことで、自分の感覚意識の中に、「メディスン・マップ」のような感覚的な地図・広範な見取り図を作っていくことができるのです。
それは、私たちの「意識形態」そのもののマップともなっていくのです。
そして、そのことは、私たちの意識拡張と意識統合のために、とても役立ち、実りの大きなものとなっていくのです。
そのため、ここでは、アヤワスカとの比較で、特徴の強いメディスンについて、少し記してみたいと思います。
また、アヤワスカと同じく、各種注意事項については、ここでも同様ですので、そのあたりの注意点について、下記の内容をまずはご覧ください。
→「サイケデリック・シャーマニズムとメディスン(薬草)の効果「各種の注意事項」
「マジック・マッシュルーム」とは、一種の総称(俗称)であり、実際は、シロシベ・クベンシスをはじめ、数百種類のキノコがそのように呼ばれているものです。
かつて、菌学者ゴードン・ワッソンは、メキシコの部族(マサテコ族/マリア・サビーナ)の儀式に参加し、西洋人として初めて、幻覚性キノコを食して、その興味深い体験を、『魔法のきのこを求めて Seeking the Magic Mushroom』と題して、『ライフ LIFE』誌(当時600万部発行)に掲載しました。1957年のことでした。
その魅惑的な文章によって、「マジック・マッシュルーム(魔法のきのこ)」はひろく、現代世界に知られることとなったのです。
後に、ワッソンは、キノコを、(LSDの発見者)アルバート・ホフマン博士に送って、その成分分析を依頼しました。そこで、幻覚性成分である「シロシビン」が抽出されたのです。
さて、マジック・マッシュルーム(シロシビン)は、その効き方において穏やかであり、近年サイコセラピー(心理療法)の中での使用が、ふたたび試みられているというのも、とても頷けるところです。
マジック・マッシュルームのメディスンは、その開放性、ゆるやかさ、宇宙的浸透性において顕著な性格をもっています。
外向的(中立的)、共感的、透過的、浮遊的に、宇宙や自然とつながる性質をもっています。
(一方、アヤワスカは、直面的・対決的という意味でずっと内向的です)
フワーっと無重力的に舞い上がり、浮遊しているような軽さと夢見の性質。
密度を持たないような身体感覚。
まなざしの透視的な浸透性。
宇宙的浮遊感。
境界を抜ける透過性。
大自然や宇宙との溶けるような融合。
そのように繊細で豊かな性格をもっているのです。
そのメディスンの幻視世界は、
アヤワスカが(喩えると)「ドストエフスキー×フィリップ・K・ディック×ラテンアメリカ小説(魔術的レアリスム)」だとすると、
マジック・マッシュルームは、「ルイス・キャロル×幻想SF小説×ラテンアメリカ小説(魔術的レアリスム)」といった趣きです。
アヤワスカの体験が、ハードでヘヴィー、シリアスで苛酷であるのに対し、マジック・マッシュルームの体験は、拡散的で浮遊的、よりユーモラスで遊戯的な性格を持っています。
それは、軽やかで、自在で、宇宙と自然を透過する夢見のスピリットなのです。
【2】ブフォ・アルヴァリウス (5-MeO-DMT) ―「神」に戻った日
ブフォ・アルヴァリウス Bufo Alvarius (通称ブフォ)とは、ソノラ砂漠ヒキガエルとも、コロラドリバーヒキガエルとも呼ばれる蛙 toad のことです。
この蛙の皮膚から分泌される毒の中には、サイケデリックな成分である5-MeO-DMTが含まれているのです。
メキシコの部族がメディスンとして使っていたとされていますが(そういう動画もありますが)、本当のところはよくわかっていません。
成分としての5-MeO-DMTは、一般に、アヤワスカの主成分であるDMTよりも「強く、速い」と言われています。
昔は、一部で「死のドラッグ」などとも呼ばれていたこともありました。
そのため、その効果は、特異なもので、DMTが「スピリットの分子 Spirit Molecule 」と呼ばれるのに比して、5-MeO-DMTを「神の分子 God Molecule 」と呼ぶ人々もいます。
実際、その効果は、とても極端で、深遠な性格を持つものでもあります。
グロフ博士が指摘するような、サイケデリック体験の極相も現れてくることがあるのです。
→「サイケデリック・シャーマニズムとメディスン(薬草)の効果「S.グロフ博士による、サイケデリック体験の特徴」
そうはいっても、イメージがつかないと思うので、ここでは、以下に、筆者自身が実際に経験した不可思議な体験を引用しておきたいと思います。
【体験】
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成分が急速に血中で膨張していくのがわかる。
押し流すような眩暈とともに、氾濫するものが身体中にひろがり、
急速に知覚と身体が溶解していく…
急激に高まった海水が防波堤を越えるように、防波堤を決壊させるように、過剰なエネルギーの流れが超過してくると、
すべての知覚は溶け去り、
意識はへりをなくし、
意識は一気に「宇宙大に拡大」していく…
時空を突き破っていくような、
凄まじい爆発的な拡張感…
轟音のように膨張するエネルギーが一気に突き抜け、
人間の存在はかき消され、
消滅し、
意識はへりを喪ってしまう…
そして、
瞬時にして「宇宙そのもの」になっている。
広大な「宇宙そのもの」。非時空・非次元の巨大なエネルギーとへりのない意識。
「宇宙そのもの」。そして、
「神」になっている。主語はない、宇宙そのものである神。
「完全である」という以外に言葉がない。
宇宙自体であり、
すべてが完全であるという至福。
踊るシヴァ神のようだ。人間が決して想像することのできない「完全さ」であり、
「完璧さ」である。
至福の上の至福の上の至福。
至高の極瞑想の至福。
最上級の頂点の向こうにある至福。
(サッチダーナンダ/存在意識至福)神であることの完全な至福。
「完全」であり、
自分のよろこばしい意志で、
すべての時空が踊るよう、
遊ぶよう創造された。
この宇宙のすべてを創った神である自分がわかる。生も死もない。
この完璧な完全さの中では、
創造も破壊も等しくある「完全さ」だ。
自分の意志で、
この宇宙は創られた。
笑いと歓び、澄んだ意識と、
極相にひろがる舞踏。何も「他」というものがない完璧な「完全さ」。
生も死もない。
宇宙を創っている自分がわかる。
つまりは、
もともと、自分は「この神であったこと」を思い出している。
はじめは、「神であった」のだ。やがて、だんだんと形象が戻ってくる。
舞踏のように、
極相から極相へとめぐるもの。
そして、まわりの皆(○○ちゃんも○○)も、宇宙そのものであり、神である。
すべてが、神である。
すべては、本源の、他のない神である。だんだんと、世界が戻ってくる。
そして、「人間」「この私」であることもまた善い。
「この私」「人間」であることと、「神」であることに矛盾はない。
イエス・キリストの意味合いがわかる。
私たちは、皆、イエス・キリストだ。
地球を遥か下方に見るようだ。
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サイケデリック体験や変性意識体験の中では、人は、しばしば生命の系統樹をさかのぼるような体験をしたと報告します。
「自分は胎児、受精卵になった」「自分は動物、爬虫類になった」「自分は植物になった」「自分は鉱物になった」などなどです。
しかし、事態は、それだけにとどまるものではないということです。
ブフォは、私たちを、可能性の彼方に投げ込んでいく特異なメディスンです。
そのため、その分、受け手側の入念な準備も必要となるので、アヤワスカ同様、事前の心の探求や、注意深い対応が必要となっているのです。
【関連ページ】
→「アヤワスカ―煉獄と浄化のメディスン(薬草)」
→「さまざまなメディスン(薬草)の効果 その2―ペヨーテ、または、異次元的光源の炸裂」
→「サイケデリック・シャーマニズムとメディスン(薬草)の効果―概論」
→「サイケデリック psychedelic (意識拡張)体験とは何か 知覚の扉の彼方」
→「変性意識状態(ASC)とは何か はじめに」
→「英雄の旅 (ヒーローズ・ジャーニー) とは何か」
→【図解】心の構造モデルと心理変容のポイント―見取り図